映画『ゼロ・グラビティ』感想(ネタバレ&あらすじ有り)

目を覚ますとそこにコワルスキーの姿は無く、それは幻覚だったと気づく。

コワルスキーの後押しに促されるように、すぐに酸素濃度を上げ、着陸用のジェットを使って中国の宇宙ステーションへ。

gravity21jpg

そしてタイミングを見て、ソユーズから飛び降り、宇宙ステーションに何とかしがみつくライアン。

宇宙ステーションに乗り込むが、そこに再び破片の嵐が。
宇宙ステーションは軌道を外れ、地球の引力に吸い寄せられるように地球に急接近。

ライアンは宇宙ステーションにドッキングされていたポッドに乗り込み、ドッキングを解除しようとするが、解除まで60秒。
ポッドの中は高温になり、ライアンは生きるか燃え尽きるかの2沢に運命を任せることに。

そして大気圏に突入し、なんとかドッキングは解除。
すさまじい勢いで気球に落ちていくライアンを乗せたポッド。

gravity20

無事にパラシュートも開き、青空の中、ヒューストンから無線が。

そのままポッドは湖に落ちる。

ポッド内の火災でライアンは救出活動を待てず扉を開けてしまう。
そこに大量の水が押し寄せ、ポッドは沈みライアンもポッド内に押し込められてしまう。

なんとか脱出したライアンは水中で重い宇宙服を脱ぎ捨て、泳いで浮遊。

見上げるとそこは青空。

近くの浜に泳ぎ着く。
そのまま大地に倒れ込むライアン。

そこでの重力に思うように立てず、思わず笑ってしまう。
そして再び大地に両足で立ち、天を見上げ、歩き出すライアン。

この作品を観るには

感想とか

素晴らしい映像美と、まるで宇宙に居るかのような演出

一番の見所はなんと言っても美しい映像です。
冒頭の数分間ですぐにその美しさに魅了されます。

gravity03

宇宙からみた地球。

gravity15

地球の縁から漏れる太陽の明かりなど、本当に美しく魅せてくれます。

カメラワークやカットなどもとても見やすく、場面によってはライアン目線で映され、本当に自分が宇宙に居るかのような疑似無重力体験を感じることができたかも知れません。

カメラワークには、無重力のその中での感覚を大事にするように、主人公に合わせた動かし方や、シームレスで主観と客観が切り替わるなど、ぶつ切り感が無く、連続して見る楽しさがありました。
なので、突然それから何時間後・・・の様な演出は抑えられており、実際に主人公のライアンと同じ時間 宇宙をさまよっている様な気持ちにさせられました。

未知の領域での緊迫感、恐怖感、絶望感

そして題名ともなっているグラビティ(重力)が無い空間で、いま何が最善なのか、なにをすれば良いのか全く分からない宇宙空間での迫られた危機的状況が伝わり、見てる自分も手に汗握る程でした。
自らの意思ではどうすることもできず、ただ無重量の中で生まれた力によって身体が流されるだけ。

冒頭で主人公がシャトルの爆発によって飛ばされ、身体がグルグル周り、全く制御が効かないシーンは「やばい!やばい!」じゃ片付けられないほどの恐怖感。

gravity07

頼れる仲間が目の前に居るのに、自分の身体を制御できず助けられない。
意思に反して どんどん希望から遠ざかっていく。
たった一人、宇宙の暗闇の中に取り残される感覚は、誰も居ない 知らない街でひとりぼっちのそれよりも数億倍以上の絶望感がありました。

見応え十分

宇宙に取り残され、何とかして地球に戻ろうと奮闘する。大ざっぱに言えばこれだけの内容なんですが、それすら平然とカバーするぐらいの映像を見せてくれます。

gravity19

次々に起こる展開は見てて飽きませんでした。

特にラストギリギリまで地球でのシーンが全く入ってこない点や、主人公の昔話で回想なども入れてこなかった点。
余計な解釈を必要としない所がある意味非常に良かった。

細部までにわたる演出の緻密さ

とにかくこだわりが深い。

途中に出てくる宇宙ステーションも全てを含め、細部まで忠実に表現されています。
無重力空間での物の動きや、ただ飛んでいったペンの軌道まで素晴らしく計算されていました。

宇宙服での不自由さと視界の悪さ。それを補うために付けられた腕の鏡など、全く宇宙について知らない自分でも「そうなってるんだ!」と感心してしまう点もいくつか。

ただやはりフィクションという部分もあって、細かな設定には実際のものと食い違いがあるみたいで、まぁそこのリアリティは考えずに見て楽しみました。

そして宇宙と言えば無音。
この映画は音の表現も実によく出来ていて、宇宙空間では破壊音もしないが、そこをBGMや無線の会話で見事に緊迫感を演出している。
よく当てつけかのように宇宙のシーンでも爆発音を出しちゃう某映画がある反面、この映画は細部に無音の演出が行き届いていた。
身体がぶつかる音もきちんと宇宙服の中に響く音として表現されており、こだわりを感じました。

ラストの湖のシーンでもライアンに同調するように水中と海面の音を操作していたのも、また音に関するこだわりの現れだと思う。

制限のある中での迫真の演技

本作は、主人公のライアン・ストーン、と船長のマット・コワルスキーの2人しか出てきません。
厳密に言うとハーバード大卒の浮かれ者や、後に死体で見つかる複数の乗務員が居ますが、それらは名前すら出ませんでした。(ハーバード大卒の人は出ててかな?)

主人公のライアン・ストーン演じるサンドラ・ブロックは、キアヌ・リーブス主演のスピードでもお馴染みの女優さん。
これがエンドロールでSandraの文字が出るまで分からず、分かったときに「おわ!スピードの人やん!」と心の中で興奮したのは多分私だけ(笑)
もう言うことの無い演技技術なんですが、宇宙服で顔しか出せない状態の中での表情のみの演技など、本当に切羽詰まってる感じが伝わり、見応え有りでした。

gravity09

特にどうすることも出来ない状態で一時は死を選ぶ場面での迫真の演技は見物です。

そしてもう一人。船長でマット・コワルスキー役の 皆さんご存じジョージ・クルーニー。
当初はこの役はロバート・ダウニー・Jr.が演じる予定だったらしく、ロバート・ダウニー・Jr.信者の私からすると、その方が幾分見る意欲が湧いたかも知れませんが、見た後ではやはりジョージ・クルーニーが適役であったと声を大にして言いたいほどの貫禄でした。
途中でコワルスキーと離ればなれになってしまうのですが、そこで分かるコワルスキーが居てくれた安心要素が絶望に180度代わる要因は、やはりジョージ・クルーニーの貫禄に他ないと思います。
宇宙空間でも大丈夫だと思わせてくれる安心感はジョージ・クルーニーにしか出せない雰囲気だったと思います。

ラストシーンの為の90分間

この映画の9割以上が無重力空間での出来事なんですが、ラストで地球に降り立ち、重力を感じた時の気持ちは鳥肌物でした。

90分間の無重力宇宙漂流の終着点としては本当に素晴らしく、主人公が大地を踏みしめた後すぐに「GRAVITY」の文字がどーん!と出た時は震えます。

やはり大地の安心感は凄い。
宇宙での不安な気持ちを全て取っ払ってくれるラストシーンで気持ちよくさせてくれました。

つまり、ラストで始めて”重力”を感じることが出来るこの映画。
そのための原題「GRAVITY(重力)」で、ラストで「GRAVITY」の文字がどーん!と出る所にこの映画の制作陣の気持ちが込められてるのに、邦題で”ゼロ”グラビティ(無重力)としてしまう日本。
この邦題を付けた人はこの映画の真意を理解できてないと思います。

人間にとって宇宙は本当に未知で偉大すぎる領域。大地と人は切っても切れない関係性など、本当にメッセージ性の強い映画でした。

映画館で見るべき映画

これをもう一度自宅で見たいかと言うと それはNO。

この映画の本質はやはり”映像美”に尽きると思います。

gravity14

映画館での真っ暗な中、巨大なスクリーンで映すIMAXの映像と音。そして3D。
これで始めてこの映画のベースが完成するわけです。

逆にこれがテレビ放送やBDで家庭で見た時にどう見えるのか。
見た後に「別にDVDで良かった」と言うような作品もありますが、本作は見た後に改めて「映画館でみるべき映画」だと強く思いました。

スピンオフ

物語の中でライアンが無線でたまたま繋がった先の男性と対話するシーンがあるんですが、その男性側のショートムービーです。
本作は完全なるライアン目線のみの映画なので、こうした別視点の物語を本作を見た後に見ると改めて感慨深いものがありますね。

最近観た映画の中ではトップクラスで美しい映画でした。

この作品を観るには

1 2 3 4