暗闇の中で身体にまとわりつく複数の光。
そして目覚めるケイジ。
そこは何百回も目覚めた基地よりも前に、将軍に呼び出された時に乗っていたヘリだった。
また繰り返す日々が始まったのかと悟ったケイジだが、そこで見たことも無いニュースが舞い込んできた。
すぐにケイジが向かった先はリタと何百回と出会ったいつもの場所。
果たしてそこに居た者とは。
そしてギタイとの決着は着いたのか。
エンドロール後はなにもありませんでした。
この作品を観るには
感想とか
ただのループでは無い
この作品のキーポイントは、繰り返す日の一つ一つに意味があること。
ループすることで記憶は失われず、その経験や感情が蓄積されていくという点。
ここだけ取れば他に似たような作品は多々ありますが、この作品では主人公と同じようにループしていた人物が別におり、共感を得られるという第二の主役が存在していることが大きな特徴です。
これのおかげで、この作品の展開がよりスピーディーになっています。
繰り返す同じ日々に、少しずつ変化を加えてゴールへと向かっていく。
昨日とは違う行動をしたから、別の未来が開けた。
その経験を経て、最善の未来へのルートを探っていく。
行動一つでどの様に日々が変化していくのかを見ていくのがこの映画の見所でもあります。
原作との相違点
まず日本での公開で目を引き、キャッチコピーともなっている「日本原作」。
文字通り、日本人の小説家”桜坂洋”による「All You Need Is Kill」が基となって製作された本作
ですが、これはあくまでも、いわゆる「作品を再現した」原作と言うより「そのテーマだけを採用した」”原案”と考えた方が良いです。
主人公やヒロインの名前などは原作に沿っているが、原作の世界観に脚本家の物語が付けられた全く別のものとなっています。
原作の主人公は日本人で、しかも若者である一方で、本作ではアメリカ人で中堅のトム・クルーズ。
しかもそのトム・クルーズに付けられた役名が”けいじ”と言うアメリカ人らしからぬ点。
そんな役名にも原作の”キリヤ・ケイジ”ではなく、”ウィリアム・ケイジ”としているところは、多少無理矢理感も。
さらに加えるとリタの特徴である武器がバトルアクスではなく、だたの巨大な剣だったりと
他にも映画オリジナルの要素が沢山有り、原作を読んだ方は少し「あれ?」と思う点も多い。
故に、原作にある「ジャパンのレストランでは食後のグリーンティーは無料だと本に書いてあったのだが…本当なのか?」と言う台詞も本作には存在しません。
戦場に慣れないケイジを落ち着かせるためのこのリタの台詞は、後に同じ台詞をケイジが口にして、戦場でのケイジの成長を思わせる、特徴的な掛け合いですが別の言い回しでも採用されなかったのは少し残念でした。
しかし、それでもハリウッド実写化としてはかなり原作の要素を拾ってくれている優秀な部類だと思います。
敵の”ギタイ”であったり、役名の”ケイジ”等数々の設定をそのまま引き継いだのも逆に原作をリスペクトしているとも考えられます。
実際に本作のプロデューサーであるアーウィン・ストフは原作者の桜坂洋に向けて
「あなたの小説を決して汚すことはしません。核になるアイデアを大事にしたいといつも思っていました」
と延べ、桜坂洋も
「僕の想像を超えた作品になっている」
と述べており、原作者も公認の仕上がりになっているみたいです。
作品としての完成度
しかしそれでも、本作を見終えた後にはそれなりの満足感を得られました。
原作とは大きく逸れた進み方ですが、かなりの完成度を感じ、その世界観をよくかみ砕いて、そこにトム・クルーズを適当に配置し、その中で上手く戦闘を行った。
ハリウッド化や実写化と言うと高確率で嫌な予感がしますが、本作は非常に上手く原作を利用して物語を構成しているなぁと関心しました。
なので、原作はあーなのに!こーなのに!と言う嫌悪感があまり感じられなく、一つの作品として素直に取り入れることが出来たのは、過言ではありません。
原作の設定を素直に多く取り入れ過ぎず、トム・クルーズと言う全く違った主人公を置いたのが当たったのかも知れません。
ただ、原作にあった、ギタイ自身もループの記憶を持ち、成長しているという設定は、それっぽいシーンもあったけれど、説明として欲しかったかな。
リアリティへのこだわり
上記の動画で7:36辺りからメイキング映像がご覧になれますが、CGを極力使わない姿勢がトム・クルーズ自身など役者にまでうかがえます。
冒頭と終盤に出てくるロンドンのトラファルガー広場は、まず撮影許可は下りないと言われる観光地としても有名ですが、本作では合成を使わず、実際にトラファルガー広場に軍用ヘリを着地させるなど、特例な撮影も行っており、かなりの本気度を感じました。
そして本作の見所としてはアクションシーンも欠かせません。
本作では出来るだけCGを使わずに製作するために、作品内で出てくる戦闘アーマーを実際に製作。それを装着してシーンを撮影しています。
アーマー自体は36kgの重さに、装備を付けると55kgにもなり、かなりの重さとなります。
その中でのアクションとなるので、CGで加えられたような、どこか軽みのあるものではなく、ズシン!ズシン!と重量感も表現されていました。
しかしそれの代償で、華麗な立ち回りが多少欠けてしまったのも事実。
一応俊敏な動きのシーンもあるのですが、明らかにワイヤーを使っている動きに、それまでのリアリティさが無視されてしまったようで、少し残念でした。
ある意味新鮮なトム・クルーズ
トム・クルーズ演じるケイジは、最初から最後まで臆病で人間味ある性格。
そんな終始臆病な役をトム・クルーズがどのように演じるのかが見る前から少し楽しみではありました。
戦闘を繰り返すことで兵士としては成長をするが、心が追いつかないという非常に難しい心境を、トム・クルーズらしさで表現していました。
次回作は
原作は既に完結しており、映画内でも見事にループを脱出しているので綺麗に終幕しており、これ以上の映画の続編は、原作を汚すリスクが高すぎるので、制作側としても本望ではないでしょう。
10年の時を経て原作に続編が作られれば話は別でしょうが、これ以上の続編は無いと思って まず間違いはありません。
コメント欄にて原作作者が続編を執筆中とインタビューに答えていたとの情報を頂きました。
続報がありましたら、またここに追記させて頂きます。
これから原作を読む方
原作は小説本1冊で完結するので、非常にサラッと読めます。
活字ばかりが嫌いな人は、漫画デスノートや漫画バクマン。などでもお馴染みのイラストレーター小畑健の絵により漫画化もされており、非常に読みやすく構成されているのでオススメです。
作者が原作の続編を執筆中であると、インタビューで行っていました
インタビュー記事を検索してみると仰るとおり、執筆中との記事を発見することが出来ましたので、記事の一部を修正させて頂きました。
貴重なご意見ありがとうございます。