映画『四月は君の嘘(実写版)』感想(ネタバレ&あらすじ有り)

「ショパン/バラード第1番 ト短調 作品23」

一方で、かをりの手術も始まる。

公生の奏でる音色は直ぐに会場を包み込む。
それは公生のかをりへの恋心をそのまま赤裸々に表現したような音色。

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と、演奏が中盤に差し掛かる頃、公生のピアノの音に合わせて突然ヴァイオリンの音色が重なる。

公生が顔を上げると、目の前にはヴァイオリンを弾くかをりの姿が。
それを見た公生は泣きそうになりながらも、演奏を続ける。

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会場にはピアノの音色だけ。しかし公生にはハッキリとヴァイオリンの音色が重なって聞こえる。

そして二人の演奏が続き、涙をこらえながら弾く公生に、公生を見つめてヴァイオリンを弾く手を止めるかをり。

そんなかをりを何とも言えない表情で見つめる公生の目の前からかをりの幻影が消えてしまい、演奏は終わる。

その後、音楽室でかをりから送られた手紙を読む公生。

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そこで語られる、かをりが公生を初めて見たときの話。
自分が重い病気にかかり、後悔しないために立ち向かうと決めた話。

そしてかをりがついた一つの嘘が明かされる。

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さらにお別れの言葉と、最後にかをりの本当の気持ちが伝えられる。

この作品を観るには

感想とか

音楽は綺麗。演技はぎこちない

演奏は全てが当て振りで、指のアップは別のモデルアーティストのものでしょう。
故に、音楽は非常に美しく、聞いているだけで感動できるレベルだと思います。

しかし、弾いている本人達の佇まいというか、特にピアノ前に座っている姿がガチゴチで、全く音楽にのれてないのがピアニストらしくなくて違和感が凄かったです。

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2時間では表現できない

実写版では原作の3分の2程の内容がゴッソリ抜かれています。
重要な登場人物も、存在しない者としてエピソード自体もありません

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実写版で四月は君の嘘という作品の面白さが表現できていたかと言うと、表面の薄皮程度しか見せられていなかったのが非常に残念で、駄作と評価されても仕方ない内容だというのは否定できません。

しかし、それだけエピソードや登場人物を抜いたのにも関わらず、2時間の物語としては上手くまとめられていました
原作を知らずに見たとしても、それなりに見られる内容だとは思いました。

きちんと感動できるポイントもあり、特にラスト、公生が一人で演奏している中、バイオリンを弾くかをりの幻影が現れる瞬間は実写版オリジナルの演出で鳥肌が立ちました。

原作との相違点

私が気付いた原作との違いはこちら↓

原作との相違点一覧
  • 主要キャラが高校生(原作は中学生)
  • かをりが茶髪(原作では金髪)
  • ガラケーではなくスマホ。
  • 紘子さんが最初から登場し、椿と渡とも面識がある(原作では毎報音楽コンクールからの登場)
  • 公生がかをりを「宮園」と呼んでいる(原作では「君」としか呼んでいない)
  • 川に飛び込んだ後、公生が眼鏡を落とさない(原作ではなくす)
  • カフェで公生が一人できらきら星を弾く(原作では小さい女の子達と一緒に弾く)
  • カフェの後、公生がピアノの音が聞こえないことをかをりに告白する場所が海の見える丘(原作ではカフェの前の公園)
  • 公生がコンサート後に母親から叱られるシーンでビンタのみ(原作では杖で叩かれ流血)
  • 公生とかをりが初対面するところで、かをりがピアニカで弾いている曲が「ハトと少年」ではない。
  • 公生とかをりがきらきら星を歌いながら歩く(原作では自転車の二人乗り)
  • かをりの最初のコンクールで弾いた曲が「バガニーニ/24のカプリースOp.1 第24番 イ短調」(原作では「ベートーベン/ヴァイオリン・ソナタ 第9番 クロイツェル」)
  • かをりが公生にピアノを弾かせようとしていることを椿に初めて話す場所が教室(原作では家庭科室)
  • 椿とかをりが下校するときのバスの外が夕方で晴天で座っている所が向かって右側(原作では夜の雨の中で左側)
  • 聴衆推薦での第二回のコンクールで、かをりの着ているドレスがエメラルドグリーン色(原作では白色)
  • 「君は忘れられるの?」が橋の上(原作では病室)
  • かをりが課題曲を決める場所が公生の家のピアノの部屋(原作では学校の音楽室)
  • 椿の告白が晴天の中、丘の上の芝生のベンチ(原作では雨の駄菓子屋の前)
  • かをりが夜の病院で歩けなくなる場所がロビー(原作では廊下)
  • 椿が柏木から公生への気持ちに核心を突かれる場所が校庭のベンチ(原作では体育館でバスケしながら)
  • 「無理かどうかは女の子が教えてくれるさ」が屋上(原作では音楽室と廊下)
  • 雪降る病院の屋上で、公生がかをりに好きだと告白する(原作では公生はかをりに直接一度も好きだと言っていない)
  • 公生がかをりからの手紙を音楽室で読む(原作では色々な思い出の場所を歩きながら読む)
  • ラストで椿が音楽室で公生に「一人になんてなれると思うなよ」と言う(原作では踏切の前)
主にカットされた部分一覧
  • 井川絵見、相座武士、相座凪、三池俊也、チェルシーのエピソードと存在自体は丸々無し。
  • 毎報音楽コンクールとそれにまつわるエピソードは丸々無し。
  • 公生がモーモー印の牛乳とたまごサンドが好きなエピソードは無し。
  • 公生が事故に遭った黒猫を動物病院へ連れて行くシーンは無し。
  • 椿が音楽室の窓ガラスを割るシーンやエピソードは無し。
  • 椿が夜、隣の公生の家から聞こえてくるピアノを聞くシーンは無し。ここでの貴重な椿の母親も登場無し。
  • 黒猫のキーポイントも亡いので、冒頭でかをりが黒猫を追いかけるシーンは無し。
  • 公生とかをりが初対面するところで、木にかけられたヒールとレギンスを取るシーンは無し。
  • かをりの最初のコンクールで演奏後に子供から花束を貰うシーンは無し。
  • 第二回のコンクール演奏後に舞台袖でかをりが倒れるエピソードは無し。その後の病室でのシーンも無し。
  • かをりが手術に向けて前向きにリハビリなどしているエピソードやシーンは無し。
  • 雪降る病院の屋上で、かをりが公生を勇気づける為にヴァイオリンをエア演奏するシーンは無し。
  • かをりの死後、公生が墓地でかをりの両親から手紙を貰うシーンは無し。
  • かをりから小さい頃のかをりとたまたま通りかかった公生が写っている写真のプレゼントやエピソードは無し。
  • 公生と椿の幼少期のエピソード丸々無し。
  • 第二回のコンクールの後、椿が公生になにかを初めて感じるシーンは丸々無し。
  • 斎藤キャプテンと椿との恋物語は無し。斉藤キャプテン自体の存在も無し。
  • 椿と渡の部活の試合は丸々無し。なので、椿が足を怪我して公生におぶって貰うシーンや、渡が最後の試合に負けて泣くシーンは無し。
  • 椿と公生が浜辺でアイスを食べながら、公生が音楽科のある高校へ行く告白をするシーンは丸々無し。
  • 椿が公生の高校の近くの高校に行く努力をするエピソードも無し。
  • 音楽室で失恋した椿を公生がピアノで慰めるシーンやエピソードは無し。
  • 椿が公生の髪の毛を切ってあげるシーンは無し。
  • 紘子さんが公生にピアノを勧めたのは私だという罪の意識も無し。
  • その他、数々の名言がカット。

細かいところを入れると、まだまだありますが、目に付いた所はこの辺りでした。

特に四月は君の嘘という作品は細かい伏線や名言、語りなどが後の物語に繋がる重要なキーワードとなるので、実写版では名言は少し、語りはほぼ無しだったので、作品としての深みが無く薄っぺらい内容になってしまっていたのが非常に残念でした。

嘘がつけていない

この作品のタイトルにある「嘘」という最も重要なキーワード

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終盤までかをりは渡が好きで、公生はただの音楽パートナー。
こういう関係で物語が進み、物語の最後にかをりが渡を好きだというのが「嘘」で、実は公生が好きだと言う告白があります。

こうして「嘘」を知り、作品を見直すと、要所要所でかをりの行動や言動が実は公生へのアピールだったと、「嘘」を知ってからもう一度見ると全く違う観点で見られると言うカラクリがこの作品の醍醐味なんですが、

かをりが公生を好きすぎる

しかし実写版では、かをりが渡に気があるように見せる重要なシーンが少なく、フラットな状態から見ても、最初からかをりは公生のことが好きにしか見えず、渡のことも好きだって言ってるし、結果もうただの男たらしにしか見えませんでした。

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かをりと渡の間に公生は入れないと言う大事な描写も、かをりは公生ばかり相手にしていて、
最後の告白も「実は公生を好きだった」というものでは無く「やっと告白できた」というものになってしまっていたのも本当に惜しい。

原作では、公生がかをりと初めて出会うシーンで、ピアニカを強く吹き過ぎちゃったと言い訳しながらも涙を流しているのは、実はやっと公生とちゃんと会うことが出来たという嬉し涙という伏線でもあるのですが、こういう細かい演出が他にも沢山あるのですが、実写版ではことごとく省かれており、この作品の醍醐味である、2度目の美味しさが全く見られませんでした。

椿の恋愛がおまけ

幼馴染みで弟のように思っていた公生に、実は恋心が生まれていたという椿側のラブストーリー。

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公生との幼少期からのエピソードや、椿が部活の憧れのキャプテンと付き合いながらも、公生に惹かれていく自分がいる葛藤など、原作では重要なエピソードとして描かれていましたが、この実写版では、椿の公生への告白への運びはほとんどがオリジナルで、あっけらかんと終わってしまいます。

椿の恋愛に対する子供っぽさや不器用さも、椿の気持ちも全く表現できておらず、ここが一番納得いかないというか、もうちょっと大切に扱って欲しかった部分です。

演奏中に客席での私語が多すぎる

会場で演奏中なのにも関わらず、客席で感想をベラベラと喋りすぎです。
小声ならいいものの、独り言なのに普通の会話のボリュームで。
椿と渡はいいけど、審査員までも、あんなに大声で独り言言われちゃ、周りに迷惑だと、せめて原作通り心の声として演出して欲しかった

気持ちや演奏の表現

かをりの天真爛漫なバイオリン演奏を聴いて揺れ動かされる観客達の気持ちが、実写版では描かれておらず、演奏後にスタンディングオベーションが起きても、あまり情景に重みが無く、凄い演奏だったのかイマイチ伝えられていませんでした。

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どこがどう凄いのかという説明も無ければ、曲が変わるポイントで、キャラクターの力のスイッチの入りもよく分からず、演奏の切り替わりが全体的にふわっとしてしまって、演奏による感動が薄れてしまっているようで残念でした。

この作品を観るには

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