そしてかをりの番がやってくる。
「バガニーニ/24のカプリースOp.1 第24番 イ短調」
初めは譜面通りに弾くかをりだが、途中からテンポも強弱もバラバラに、自分の弾きたいように弾くスタイルに。
そのスタイルに審査員長は前代未聞だ!と激怒。
一方、公生は、楽しそうに自由に弾くかをりを見て驚きながらも目を奪われていた。
そんな公生を見て嬉しそうな椿。
その後、学校の屋上でボーッとしている公生に、渡がかをりちゃんの事考えてたろ?と言うが、公生は、あの子は渡の事が好きなんだよ、と冷めた様子。
心惹かれる子女の子に好きな人が居るのは当然。恋をしてるからその子は輝く。だから人は理不尽に恋に落ちる。と、その渡の言葉に感心する公生。
しかし、僕には無理だと尚も消極的な公生に、無理かどうかは女の子が教えてくれるさ。と、またもその渡の言葉に感心する公生。
そして下校。
すると渡の携帯にマキちゃんからカラオケの誘いがあり、喜んで飛んでいく渡。
そして公生が一人で帰っていると、目の前にかをりが。
そこでかをりから、コンクールの感想を聞かれ、良かったと答える公生。
すると、かをりは渡を待っているようで、公生は咄嗟に渡は部活で、と嘘をついてしまう。
そして部活を見に行こうと学校へ戻ろうとするかをりを、試合が近くて大変そうだから!と必死に止める公生。
すると、かをりは「じゃあ君。君を代役に任命します」と、かをりがずっと行きたかったと言うカフェへ。
そこでスイーツを食べていると、カフェに置かれたピアノを弾く小さな女の子達が。
それを見たかをりは、女の子達に話しかけて、「あそこに居るお兄ちゃんピアノが上手なんだよ」と、無理矢理公生を無理矢理ピアノの前へ。
仕方なく、きらきら星を弾く公生。
その音色にカフェに居る客全員が耳を奪われ、ほっこり笑顔に。
と、突然公生の手が止まり、震える手を握りながら「ごめん」と店を飛び出す公生。
飛び出していった公生を追いかけてきたかをりは、そのまま公生を連れて海の見える丘へ。
「もうピアノは弾かないの?」と聞くかをりに、公生は「やっぱり知ってるんだ、僕のこと」と、公生の素性を知ってたかをりは、
「森脇学生コンクールピアノ部門優勝」
「プリエ国際コンクール2年連続入賞」
「佐伯コンクール最年少優勝」などなど、
その演奏は正確かつ厳格。
公生にはヒューマンメトロノームとの異名も付き、8歳でオーケストラとモーツァルトの協奏曲を共演し、神童と言われるほどの実力の持ち主だった。
同年代で公生を知らない演奏家はいないほど有名な公生に、なんでピアノを辞めたの?と聞くかをり。
すると公生は「ピアノの音が聞こえない」と。
弾き初めは聞こえるが、集中すればするほど、ピアノの音だけが聞こえなくなると告白。
公生はそれを自分への罰だと。
だからピアノは弾けないという公生に、突然、前のコンクールの聴衆推薦枠で2次予選に出られることになったと言うかをりは、伴奏を公生に頼む。
弾けないと断る公生に、「もう決めた!友人A君を私の伴奏者に任命します」と強引に引きずり込むかをり。
その日から、かをりを手を組んだ椿は、公生へ伴奏をさせる為の、ほとんど嫌がらせの行為が始まる。
校内放送で課題曲を永遠リピートで流し、公生が見る場所には譜面を大量に貼る。
そしてバスで下校するかをりと椿。
積極的に協力してくれる椿に「椿ちゃんは有馬君が好きなんだね」と言うが、椿は公生は小さい頃から一緒に居る弟みたいなモンだと。
公生は母親が亡くなった後に出たコンクールで、演奏を途中で止めて、それ以来ピアノを弾かなくなった。それから公生の時間は止まったままで、その時間をまた動かしてあげたいという椿。
そして先にバスを降りる椿と別れ、かをりはその先のバス停「都津原大学病院前」で降りる。
そして二次予選の日。
屋上で寝そべる公生の目の前にはかをりが。
尚も公生に伴奏を頼むかをりに、それでも弾けないという公生。
弾けないんじゃ無くて弾かないだけだと言うかをりに、弾くのが怖いと告白する公生。
そんな公生に私が居るじゃん!と、さらに熱弁の後に、私の伴奏をお願いします。くじけそうになる私をちょっぴり支えて下さいと、涙を流しながら頼むかをり。
そんなかをりを見て、どうなっても知らないからなと引き受ける公生。
そして椿と渡の協力もあって、なんとかコンクール会場に間に合った二人。
必死に譜面を復習う公生に、顔を上げて私を見て!大丈夫君なら出来る。旅の恥は書き捨て。思いっきり恥かこうよ。二人で。と、公生の気を緩ませるかをり。
君は自由そのものだと言う公生に、違うよ。音楽が自由なのと答えるかをり。
そして二人の出番が。
「サン=サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ」
二人の演奏で、会場はその音色に耳を奪われる。
かをりの天真爛漫な演奏にも、流石の公生はかをりのテンポに難なくついていく。
が、公生がふと客席を見ると、そこには居るはずの無い母親の幻影が。
するとついに公生の耳が聞こえなくなり、次第にテンポがおかしくなっていき、音がズレていく。
その聞くに堪えない演奏で会場は不穏な空気に。
そして、公生はかをりの邪魔をしてはダメだとピアノを弾く手を止めてしまう。
伴奏が無くても、かをりがバイオリンを弾き続ければ審査は続くが、なんとかをりまで弾くのを止めてしまう。
驚きかをりの報を向く公生に、かをりは「アゲイン」ともう一度弾き始める。
しかし、一度演奏を止めてしまった所でかをりのコンクールは終わり。
そんなかをりを見て、直前にかをりが言っていた「旅の恥は書き捨て。思いっきり恥かこうよ。二人で。」「音楽が自由なの」と言う言葉を思い出し、もう一度弾き始める公生。
公生は音が聞こえない中、椿とかをりに嫌という程見せられた譜面や音を頭の中で思い出し、ただひたすら鍵盤を叩く。
その演奏はまるで殴り合いのように、お互いに強く激しく。
その演奏に引き込まれていく会場。
そして演奏を終えた二人に会場はスタンディングオベーションで拍手喝采。
客席に挨拶をする二人に、かをりは「死んでも忘れない」とボソリ。
しかしそれからも、公生はやはりピアノは弾かずに居た。
学校からの帰り道の橋を渡っていると、公生の目の前に、またしても突然現れるかをり。
そこで、かをりから二人で出たコンクールは落ちたが、そのコンクールを主催していた所のガラコンサートに招待され、それに一緒に出ようと。
きっとまた僕がダメにすると、またも消極的な公生に、「弾いてるときの気持ち、降り注ぐ拍手。自分の音楽が届いたあの瞬間。君は忘れられるの?」と問うかをり。
みんな怖い。それでも歯を食いしばって舞台に上がる。何かに突き動かされて私たちは演奏する。そうやって最も美しい嘘が生まれる。
まだ17歳。思い切って飛び込もうよ!と、突然橋から飛び降り、川へダイブするかをり。
そんなかをりを見て、そうだ忘れられるはずが無いと公生も川でダイブ。
川でずぶ濡れになりながら笑い合う二人。
その後、公生の家で着替えさせて貰ったかをり。
と、かをりが公生の家でピアノの部屋を発見。が、そこはもう何年も人が入った形跡もなく、ピアノにはホコリがかぶったまま。
そして、かをりが掃除をしよう!と部屋をピカピカに。
と、かをりが棚から一冊の楽譜を手に取る。
「クライスラー/愛の悲しみ」
ガラコンで弾く曲をこれに決めたというかをりに、公生は他の曲にしよう!と何故か必死。
と、そんな二人のじゃれ合う姿を隣の家の窓から何とも言えない顔で見る椿の姿が。
それから練習をしようとする公生だが、ある思い出が蘇る。
それは公生が小さいとき。
コンサートで優勝した喜びを会場のロビーで車椅子に乗った母親に報告するが、母親は公生の頬をはたき、細かいミスタッチやテンポのミスを指摘。
お母さんに元気になって貰えるように弾いたと言う公生の言葉も無視して、尚も怒鳴りつける母親に、公生は逆ギレ。
「お前なんか死んじゃえばいいんだ」と一言。
その後、病院に戻った母親はそのまま亡くなってしまった。
公生は自分が母親を殺したと、そして音が聞こえなくなった公生は、ピアノを弾かなくなった。
「クライスラー/愛の悲しみ」は公生の母親が特に好きな曲で、公生が小さいときも子守歌代わりに聞いていた。
その背景を知っている紘子さんは、公生に、迷ってるなら弾いて母親の声を聞けば良い。もしかしたら音が聞こえないのは贈り物なのかも知れないと言う。
こうしてかをりと公生はガラコンに向けて練習を重ねる。
僕は伴奏だから…と裏方気分の公生にも「ガラコンは目立ってなんぼ!」と気分をもり立てるかをり。
そしてガラコンサート当日。
出番前だと言うのに、かをりの姿は無い。
紘子さんと公生は出番を後回しにして欲しいと頼むが、トリはコンクールの優勝者だと決まっており、例外は認められないと。
さらに、コンサートでのかをりの演奏を良く思っていなかった人からは、あんな音楽を冒涜してるようなヤツとまで言われてしまう。
その発言にイラッとした公生は、なんとヴァイオリンのガラコンにピアノ一人で出ることを決意し、係員にはかをりが間に合ったと言い、公生の思い切った賭けに驚く紘子さんには「ガラコンは目立ってなんぼですから」と、舞台へ。
そして公生は一人で演奏を始める。
「クライスラー/愛の悲しみ ラフマニノフ編 ピアノ独奏版」
気持ちも入って強く強く引き続ける公生だが、そこで母親が奏でていた「愛の悲しみ」の音を思い出す。
母親が教えてくれた赤ん坊の頭をなでるように優しく弾くのと言う言葉。
そして音が変わる。
さらに紘子さんの回想で、公生の母親が公生のピアノに対してストイックだったのは、自分の余命が残り僅かである事から、自分がいなくなっても大切な息子である公生がピアノだけで食べていけるように、今自分が与えられる技術を完璧にたたき込まないとと言う母親の愛の形だったことが明かされる。
そして公生はピアノに乗せて母親に最後の別れを告げる。
その後、かをりが会場に来られなかったのは、当日の朝に貧血で倒れ、頭を切ってしまった事から、入院してしまったからと言う。
そして公生は椿、渡と一緒に病院へかをりのお見舞いに。
元気そうなかをりを見つめる公生。
そんなかをりを見て病室を出て帰ってしまう公生。
その後、公生にかをりから黙って帰ったことへの抗議の電話がかかってくる。
そして電話を終えた後、病室へ戻るかをりだが、突然倒れてしまい、動かない足に悲鳴をあげる。
一方、椿は公生への自分の気持ちに気付き始めていた。
そんな中、公生が歩いていると目の前にかをりが。
退院したというかをりの買い物に付き合うことになった公生。
そして色々な買い物を終えて、かをりが学校にカバンを忘れた!と言い、二人で夜の学校へ。
教室に来ると、辺りを見渡し、ゆっくりと自分の机に行き、自分の机に落書きしてあるヴァイオリンの絵を見て感慨深い表情をする。
そんなかをりの雰囲気を見て、カバンを忘れたのは嘘だろ?と公生が図星を突く。
すると退院も嘘で、一日だけの外出許可を貰って出てきたと言う。
そしてかをりは、自分の病気の状態が良くないことを告白し、涙を見せる。
公生は何も言わず、戻ろうとかをりの手を引こうとするが、かをりは自分dね歩けるから!と公生の手を振り解いて教室を出ていってしまう。
と、かをりを追う公生の目の前で倒れ込んでしまうかをり。
その後、病院に運ばれたかをり。
公生はかをりの両親に娘のわがままで巻き込んでしまって申し訳ないと逆に謝られてしまう。
そして、かをりに呼ばれた公生が病室に行くと、こんなんなら会わなきゃ良かったねとボソリ。
その言葉になにも答えられず、病室を出て行く公生。
それからまたもお見舞いに行くことを拒否する公生に、いよいよ渡も怒鳴ってしまうが、公生は泣きながら、なにを話したら良いか分からない。僕には無理だと。
無理かどうかは女の子が教えてくれるさ。かをりが何かを頼むのは俺じゃ無くて決まっていつもお前だ。と公生を励ます渡。
その後、病院の前までは来るが、やはり帰ろうとしてしまう公生を見つけた椿は公生を誘って丘の上のベンチへ。
そこで公生は自分がかをりの事を好きだと言うことを椿に言う。
それを聞いた椿は「かをちゃんは渡が好きなの!だからあんたは私と恋するしかないの!」と、その言葉に驚く公生を捨てて走ってどこかへ行ってしまう椿。
その後、かをりの病院に来ることが出来た公生は、かをりに頼まれて屋上へ。
そこで公生は、東日本ピアノコンクールに出ることを告げる。
そしてまたかをりと一緒に演奏したいという。
そこで公生がかをりに君が好きだと告白。
それを聞いたかをりは、君は残酷だね…と、泣きながら「怖くて仕方ないの、死にたくない」と公生に抱きつく。
そしてかをりは、医者にさえ悪あがきかも知れないと言われる手術に、少しの可能性希望があるならと、手術に挑むことを決める。
一方で、公生もコンクールに向けて、練習を重ねる。
そして、かをりの手術を同日に行われた東日本ピアノコンクール。
舞台に向かう公生。