町は一瞬にして崩壊した。
そして山頂では、「ここでなにしてたんだ?」と一人つぶやくタキ。
5年後。
電車に乗るタキはスーツ姿で就活中。
しかし、あの日からずっと何かを探している気持ちが取れないタキ。
就活もなかなか上手く行かず、内定を何社も貰っているツカサとタカギにも笑われるほどに。
と、その日は久しぶりに東京に帰ってきたという奥寺先輩と会うことに。
奥寺先輩の薬指には指輪が。
昔、糸守町に行ったときの話を懐かしみながら話す奥寺先輩。
あの時の事はタキ自身もハッキリ覚えておらず、何故奥寺先輩達と別れて帰ったのか、何故山に居たのか、ほとんど覚えていない。
ただ一つ、彗星の事故に関してはとても興味を持っていたことだけは今でも覚えている。
ティアマト彗星が地球に最接近したのは8年前の10月。
その核が砕け地球に飛来することは、誰も予測していなかった。
割れた彗星は隕石となって地球へ。
町の3分の1が壊滅したが、その日はたまたま避難訓練があり、ほとんどの町民は災害を受けなかった。
町長の強引な指示が奇跡を呼んだといくつもの新聞に取り上げられた。
多くの人々が助かったと言う奇跡に興味を持ったのかもしれないというほどに理由は分からない。
そうして奥寺先輩と別れ、一人夜のカフェへ。
そこで後ろに居るカップルの会話が妙に気になったタキ。
「テッシーさぁ」
その呼び名に振り向くが、二人はそのままテーブルを立って店を出て行ってしまう。
何故あの二人がそんなに気になったのかが自分でも分からないタキ。
翌日。
タキはいつも通りスーツを着て電車に乗っていた。
電車のドアの窓に寄りかかりながら何も変わらない風景をただボーッと見ていたタキ。
するとタキの乗っている電車の隣に併走する別の電車が。
と、向こう側の電車にも同じようにドアの窓に寄りかかる女性が。
ふとお互いに目を合わせると、ずっと探していた何かを見つけたように、二人の目は大きく開き、ドアを挟んだすぐそこに居る。
お互いにお互いが分かっているかのような表情を見せる二人。
しかしすぐに二つの電車の線路は別々の道を。
次の駅で降りた二人は全力で走って相手を探す。
そして坂道の階段の下と上で出会う二人。
荒い呼吸を整え、二人はゆっくりと階段を上り、階段を降りる。
そしてそのまま会話を交わさずにすれ違う二人。
と、絶えきれず階段を上った彼が振り返って呼びかける。
「俺君をどこかで!…」
その声にすぐに振り返った彼女が返す。
「私も…」
そして打ち合わせをしたかのように二人は同時に言う。
「君の名前は」
この作品を観るには
感想とか
画の美しさ
新海誠監督と言えばもはや語るまでもないとも言えますが、それぞれの短いカットや、ちょっとしたシーンのちょっとした背景に至るまで、本当に細かく描かれており、一つ一つのコマを静止してじっくり眺めたくなるような美しさは、本編の全てに行き届いていて、まず画だけで見る人を飽きさせません。
入れ替わるにチョイ足し
今作は良くある男女入れ替わりにプラスした要素が非常に大きく物語を動かしていきます。
その要素は上映直後から始まり、最後の最後まで良いスパイスとしてドキドキとさせてくれます。
特に最初の二人の距離の儚さには心が締め付けられました。
そしてその要素が次の展開を予想させず、最後の最後までどんな展開になるのか楽しみながら見ることができ、107分丸々飽きませんでした。
音楽が物語を加速させる
今作では主題歌、挿入歌共にRADWIMPSが4曲も楽曲を提供し、それぞれの音楽をそれぞれの場所でハッキリと演出に組み込まれて披露されていました。
特にオープニングを思わせるような「夢灯籠」で始まり、二人がお互いを認識する場面では「前前前世」など。
音楽に乗せて物語を巡るシーンはスピード感があり、飽きる暇も無く次から次へと情景が入ってくるので、私的には面白かったです。
ただ、少し音楽の主張が強すぎて、せっかくの物語がちゃちゃっと済まされてしまった様にも感じてしまいました。
スッキリ終わる
新海誠監督の作品は、最終的に「この後どうなったかはまた別の話」というパターンが多いイメージがありましたが、今作はきちんと締めくくられていてスッキリしました。
終盤の電車の窓越しはきっと見た人みんなの鳥肌が立ったと思います。
そんな「この後どうなったかはまた別の話」の別の話とまではいきませんが、こんな演出がありました。
雪ちゃん先生
2013年に公開された同じ新海誠監督の映画「言の葉の庭」に出てきたヒロイン「雪ちゃん先生」が本作にも出ています。
シーンは序盤で、三葉が初めてノートに瀧の落書きを見つけた所の授業中の先生です。
キャラクター名は「言の葉の庭」では”雪野百香里”で本作では”雪ちゃん先生”とされていました。
「言の葉の庭」の作中でも生徒達から”雪ちゃん先生”と呼ばれており、本作でも「言の葉の庭」と同じ古典の先生でした。
さらに演じている声優も同じ花澤香菜と言うことで、同一人物で確定です。
こういう分かる人には分かるという、ファンをニヤつかせる演出は気付いたときに妙な喜びがあって良いですね。