君の名は。 とは

日本公開日:2016年8月26日
高校生の男女の意識が突然入れ替わってしまう。最初は夢だと思っていたそれも、次第にお互いを認識し合い、そして惹かれ合うが、その入れ替わりにはとても重要な意味と、とても悲しい事実が隠されていた。
オススメポイント
一人で見る:
友達と見る:
デートで見る:
家族と見る:
お子様と見る:
万人向けのTHE青春映画です。画が非常に綺麗で、物語も最初は難解かな?と思われる方も居るでしょうが、結果的にとても分かりやすく、退屈しません。アニメが苦手という方でも受け入れられると思います。
「ほしのこえ」「星を追う子ども」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」等を手がけた新海誠が原作・監督・脚本に。作画監督にはスタジオジブリを代表する作品を多く手がけた安藤雅司。 声優には 神木隆之介、長澤まさみ、市原悦子、谷花音などの有名役者を多く起用。
予告編
これより下記にはネタバレが含まれます
※これ以降は筆者の感想と共に作品の内容に深く関係する記述が多く含まれます。またこれは筆者の私見であり、矛盾や間違い等がある場合があります。それら全て含め、予めご了承頂いた上でご覧下さい。
あらすじ(ネタバレ)
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岐阜県飛騨のその先にある山奥の糸守と言う町に住む女子校生のミツハ。
ミツハの家は古くからある伝統を守る由緒正しき神社。
小学生の妹のヨツハと祖母の3人暮らし。
一緒には暮らしていないミツハとヨツハの父親は糸守の町長。ミツハは選挙運動で町で活動する父親が嫌いだった。
そんなある日、ミツハは寝ている間に不思議な感覚を体験をする。
しかし目覚めたときには何事もなく、ミツハもそのことを忘れているようだった。
その日もミツハはいつも通り高校に登校すると、クラスメートの雰囲気がどこかおかしい。
クラスメートで幼馴染みのサヤカとクラスメートの男子、テッシーに聞くと、昨日のミツハ自身の様子がおかしかったと言う。
話を聞くと、髪型はボサボサで、自分の席やロッカーがどこか分からなかったと言う。
授業中にはミツハが自分のノートを見ると、そこには自分の字ではなく無造作に書かれた「お前は誰だ?」と言う文字が。
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サヤカにはストレスが原因の記憶喪失とまで言われ、なんだか理解できない状況にガックシと肩を落とすミツハ。
本屋もなければ、歯医者もない。電車は二時間に一本。コンビニは九時に閉まる。そのくせスナックは二軒もある。早くこんな町を出て東京に行きたい!と言うミツハ。
そんなミツハに帰りにカフェに行こうと言うテッシーだが、テッシーが連れてきたのは登下校途中にあるカフェラテが売っている自販機の前。
呆れたミツハはそのまま帰宅。
帰宅したミツハは組紐と呼ばれる伝統の編み物を祖母と妹の3人でせっせと製作する。
そこでミツハとヨツハは何度も何度も聞かされてきた組紐の歴史をまたも語る祖母。
そして歴史を語った後は、ミツハとヨツハの父親の愚痴。
神職を捨てて家を出たあげく、政治に手を出すことに呆れ尽くしている様子の祖母。
そして夜の神社では豊穣祭と呼ばれる舞を披露するミツハとヨツハ。
巫女の衣装で舞い、仕来りに従って儀式を行う。
米を一口、口の中に入れ、ドロドロになるまで噛み、それを升にはき出す。
はき出すときには袖で隠していたが、角度によってはその場面が丸見え。
ミツハたちの舞を見に来ていた同級生達からは悲鳴が。
米を噛み、唾液と混ざり、発酵させることで酒にするという日本最古の酒造の方法だと解説するサヤカ。
その帰り、同級生達のリアクションにショックを受けたミツハは、妹のヨツハに慰められながらも、夜の神社の階段から町に向かって「こんな人生いやや!来世は東京のイケメン男子にしてください!」と叫ぶ。
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そして翌朝。
スマホのアラームが鳴り響く中、ベッドから落ち、やっと目覚める。
と、部屋を見渡すと、そこは全然知らない部屋。


「ここはどこ?」と寝ぼけている中、ふと身体を見ると、胸がない。股間には何かがある…。
すぐに洗面台に立つと、鏡には自分ではない男が。
男となったミツハ。
その男の名前はタキ(以下”女タキ”)。
すると突然、背後から知らないおじさんが「起きたか?」とやってくる。
さらにそのおじさんに朝食の当番をサボったことを叱られ、咄嗟に「すみません!」と謝る女タキ。
そのリアクションに不信感を見せるおじさんだが、その後は特に気にもとめず、そのまま会社へ行ってしまう。
恐らくこの身体の男子高校生の父親だろう。
しかし女タキは変な夢だと思い込み、ボーッとしているとスマホに「まだ家か?走ってこい!」とツカサと言う名の人からLINEメッセージが。
だれ?と思いながら部屋にかけてある制服を見つめる女タキ。
と、突然トイレに行きたくなる女タキ。
なんとか用を済ませ「リアルすぎ…」とげっそりしながら、制服に着替えて玄関の扉を開けると、目の前にはビルだらけの街が広がっていた。
東京だ!と浮かれながら学校を目指す女タキ。
なんとかたどり着いた学校も、自分が知ってる田舎の高校とは訳が違う、教室ではファッション雑誌が開かれ、ファーストフードを食べる生徒達。
まさにミツハが思い描いていた東京のイメージそのもの。
そんな中を恐る恐る自分の教室を目指して向かう女タキ。
すると後ろから知らない男子生徒に「タキ!」と呼ばれ肩を組まれる。
突然の男子からのスキンシップに顔を真っ赤にしてオドオドしてしまう女タキ。
そこでこの男子生徒の名前がタキだと言うことが分かった。
肩を組んできた男子生徒はツカサ。今朝LINEメッセージを送ってきた人物だった。
さらに友達であろうタカギと屋上で昼ご飯。
そこで必死に調子を合わせて会話する女タキだが、いつものタキの様子と違うと言い出すツカサとタカギ。
焦り、一人称も含めてなんとか誤魔化して会話をすると、案外すんなり受け入れてくれる二人。
そしてツカサが「帰りにこの前言ってたカフェに寄ろうぜ」と。
“カフェ”と言う言葉に目を輝かせる女タキ。
そして放課後、約束通りカフェにやってきた女タキとツカサ、タカギ。
田舎では見たことないメニューに、田舎では考えられない価格設定に驚きつつ、パンケーキなどを楽しむ女タキ。
と、女タキが持つスマホに新たなLINEメッセージが。
メッセージを読むと、どうやら自分はバイトに遅刻しているらしく、戸惑いながらもバイトに行くことに。
しかしバイト先が分からず、結局ツカサとタカギに聞いてなんとか自分であるタキという男子高校生がバイトするレストランへ。
そこはとても忙しいレストランで、女タキはウエイターとして働くことになったが、なにも分からない女タキに厨房では怒号が飛び交う。
そんな中でもなんとかウエイターの仕事をこなしている中、女タキは悪質な客を担当することに。
案の定、客が悪態をつき、女タキが対応をしようとした途端、そこにバイトの先輩である奥寺ミキが割って入る。
奥寺先輩は女タキを客と引きはがし、マニュアル通りの対応をして難を逃れ、悪態の着いた客は為て遣ったりと、料金を払わずに帰ることに。
そして店じまいの掃除中に、女タキはさっきのお礼を言おうとすると、奥寺先輩は親身に優しく接してくれた。
と、そこで他のバイトが奥寺のスカートが破けていることに気付く。
さっき悪態をついた客のさらなる嫌がらせだった。
どうしようと困る奥寺先輩を見た女タキは、奥寺先輩の手を引いて控え室へ。
控え室へ入ると、女タキは奥寺先輩に「スカートを脱いで下さい」と。
その発言に驚く奥寺先輩に、向こう向いてますから!と逆に慌てる女タキ。
女タキは手慣れたようにスカートの破けた部分を縫い、さらに可愛らしく刺繍まで施した。
それを見た奥寺先輩は女子力高いね!と驚き。
そこでやっとハッキリと今日のお礼を言えた女タキ。
タキ君はいつも喧嘩っ早くて今日の客が暴れ出したときも心配したけど、でも今日のタキ君の方がいいねと言う奥寺先輩。
帰宅中に、良く出来た夢だなーと、改めて思うミツハ。
そしてマンションに帰ってきた女タキがスマホをいじっていると、日記らしき記述を発見する。
そこで奥寺先輩の写真をいくつか見つけて、タキが奥寺先輩に片思いしていることに気付く。
そしてミツハはそのスマホに今日有った出来事を書き留め、メッセージを残し、ノートに書かれた「お前は誰だ?」への返事も。
すると突然睡魔が。
ミツハは自分のノートに書かれた「お前は誰だ?」と言うメッセージを思い出して、手のひらに「みつは」とマジックで書くとほぼ同時に寝落ちしてしまう。
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翌朝。
目覚めたのは本物のタキ。
制服のままベッドで寝ていた自分。
そして手のひらに書かれた「みつは」と言う文字。
さらにはスマホに書かれた覚えのない日記。
日記にはバイト帰りに奥寺先輩と二人で歩いて帰ったと。それを見て発狂するタキ。
それからのタキのその一日は、昨日の自分の知らない行動を合う人合う人に報告され、なにがなんやら。
特にバイト先では、いつの間にか奥寺先輩と仲良くなってる始末。
一方、ミツハの朝。
いつも通りヨツハに起こされ、寝ぼけていると、ヨツハから「お姉ちゃん今日はおっぱい触っとらんね」と。
ハッと寝ぼけが吹っ飛び、その言葉の真意に困惑するミツハ。
そして学校ではさらに変な目で見られる始末。
一体自分になにがあったのか、サヤカに聞くと、昨日の美術の時間にミツハの父親の悪い噂をするクラスメートに楯突いたという。
全く身に覚えのないミツハ。
授業が終わり、走って家に帰って「お前は誰だ?」と書かれていたノートを開き、他のページを見ると、そこにはミツハの周辺の人物の特徴を書き留めた内容の中に大きく「この人生はなんなんだ?」と書かれていた。


一方で、タキもスマホに書かれた数々の自分で書いた覚えのない日記を見返す。
その日記の内容と、今日一日自分に言われた身に覚えのない出来事を思い出すと全てが当てはまる。
「私、夢の中であの男の子と」
「俺は夢の中であの女と」
「入れ替わってる!?」
お互いに入れ替わりを認識してから、お互いのことや入れ替わりのことが良く分かるように。
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タキとミツハは同い年の高校生。
入れ替わりの頻度は不定期で週に2~3回で、入れ替わるタイミングは寝て起きたとき。
入れ替わった時の記憶は元の身体に戻ってから次第に記憶が薄れていく。
そしてお互いの生活を守るために、ルールを作ることに。
ミツハからタキに
・お風呂は入らない。
・体は見ない・触らない。
・座るときは足を開かない。
タキからミツハに
・無駄遣いは禁止。
・奥寺先輩に馴れ馴れしくするな。
・訛るな。
などなど。
そしてお互いにその日あった出来事をスマホに書き留めること。
こうして協力し合うことにしたが、日記を見る度に、自分はそんなキャラクターじゃない!自分はそんな行動しない!相手へのフラストレーションが溜まる。
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そして寝起きの男ミツハ(見た目がミツハで中身がタキ)を起こしに来るヨツハ。
すると居間のテレビではティアマト彗星がまもなく日本で見られるというニュース。
その日はミツハの家の神社のご神体の所へヨツハと伯母と3人でご奉納へ行くことに。
ご神体は神社のある場所よりもさらに山を超えて行かなければならない。
山道をヨタヨタと登る伯母を見た男ミツハは、伯母を負ぶって山を登る。
そして歩きながら伯母は二人にあることを教える。
土地の神様のことを「産霊(むすび)」と呼ぶ古い言葉があり、それには色々な意味がある。
糸を繋げることも産霊。
人を繋げることも産霊。
時間が流れることも産霊。
その全てが神様の力だと。
ミツハ達が作っていた組紐も神様が作った技だという。
と、途中で休憩した際に、ヨツハが水を飲もうとすると、伯母が「それも産霊。食べ物も飲み物も、人の体に入って魂と結びつく。だから今日ご神体へ奉納にいくことも、神様と人を繋ぐ大切なこと」だと言う。
そして山頂に着くと、そこにはさっきまでの雰囲気とはガラリと変わった、大きなクレーターの中に緑が生い茂り、その丁度中央に大きな岩が見える。
その岩を目指して歩いて行くと、途中で岩を囲むように川が流れていた。
そこを渡ろうとすると、伯母から、この川を隔てて向こう側は「あの世」だと言う。
言い習わしだと思うことにした男ミツハは、伯母の手を引いて川を渡る。
そして大きな岩の下に隠れるように置かれた小さな祠が。
そこでミツハとヨツハは豊穣祭で作った口噛み酒を取り出す。
その時に伯母から、その口噛み酒はあんた達の半分だと教えられる。
この酒がミツハの半分だと言葉に言えぬ気持ちになる中のタキ。
奉納も終えて下山する途中。
山から見下ろす夕焼けに照らされた町に見とれる3人。
するとヨツハが「彗星見れるかな?」と。
それを聞いたミツハが「彗星…」と口にすると、伯母が何かに気付いたように「ミツハ、お前今夢を見とるな?」と一言。
そしてベッドから飛び起きるタキ。
そのタキの眼には涙が。
なんの涙か分からず呆然としていると、スマホが鳴る。
「もうすぐ着くよ」と奥寺先輩からのLINEメッセージが。
まさかと思い、日記を見返すと、どうやらミツハが昨日奥寺先輩とデートの約束をしていたらしく、既に待ち合わせの時間ギリギリ。
急いで支度し、家を飛び出て待ち合わせ場所へ。
すると丁度奥寺先輩も到着。
突然の状況と憧れの奥寺先輩とのデートに舞い上がるタキ。
一方、ミツハも目覚め、本当は自分がタキ君になってデートに行きたかったなーと、鏡を見ると、何故か泣いている自分が。
そしてデート中のタキは、奥寺先輩とのデートに苦戦。
その最中にも、スマホに事細かく書かれたミツハのデートの必勝法や、エールなどが長々と書かれ、デートの合間にそのアドバイスを確認するタキ。
が、しかしそのアドバイスもタキの求めるものでは無く、結局デートでは奥寺先輩とほとんど会話無し。
そして写真展に寄った際に、飛騨のコーナーでふと写真を見ると、そこにはあの日ご神体へ奉納へ行った帰りに見た町の風景が。
その写真に見とれていると、奥寺先輩から「今日のタキ君は別人みたいだね…」とボソリ。
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そしてタキは奥寺先輩を夜ご飯に誘うが、今日は解散にしようと言われてしまう。
そして奥寺先輩から「違ってたらゴメンね?君は昔私のことが少し好きだった?」と。
「そして今は別の好きな子が居るでしょ」とさらに続ける奥寺先輩。
それを聞いて動揺するタキは咄嗟に否定するが、奥寺先輩は「ほんとかなぁ?まぁいいや。またバイトでね」と行ってしまう。
そしてスマホにはミツハからの締めのメッセージで
「デートが終わることには、丁度空に彗星が見えるね」と書かれ、それを見て「何言ってんだこいつ…」とつぶやくタキ。
そのままスマホの電話帳からミツハの電話番号を出し、思い切って電話をするタキ。
何度もコール音が鳴る。
一方、この日ミツハは学校をサボったミツハのスマホに着信が。
それに出ると相手はテッシー。
テッシーからお祭りに誘われるミツハ。
今日が彗星の見える日だと思い出したミツハはお祭りに行くことに。
そしてサヤカとテッシーの待つところにやってきたミツハ。
そのミツハを見て驚く二人。
ミツハは髪をばっさり切ってショートカットに。
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失恋だと心配するテッシーに、男子はすぐそうやって決めつける、なんとなく切っただけって言ってたと否定するサヤカの前を黙々と歩くミツハ。
するとミツハが空に輝く彗星のオーロラを見つけ、その鮮やかさに3人とも空に目を奪われる。
と、一直線に向かう彗星から赤い欠片が飛び出したのを見つけるミツハ。
その瞬間、何かが途切れたような音が響く。
一方、タキはミツハに電話をするも、電波の届かないところに居るか~のメッセージに電話を切る。
この散々だったデートの結果は次に入れ替わった時に言えば良い。
そう思っていたが、何故かそれから二度とミツハとの入れ替わりは起きなかった。
それから何日が経ったか。
相変わらず入れ替わりは起きずに、ミツハへは電話もメールも届かず。
いつの間にか生活は元に戻り、何時ものように電車に乗り、学校に行っては、バイトの日々。
ただし、前よりもバイトに打ち込むタキ。
そして夜はひたすらスケッチブックにあの町の画を描き続けていた。
自分の記憶を絞り出して、飛騨の山の画像を検索して、それを照らし合わせたり。
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そしてそのスケッチが完成したとき、タキはその画を荷造りしたリュックに入れてある場所へ。
東京駅の改札を過ぎると、そこにはツカサ。と奥寺先輩が。
ツカサには親へのアリバイとバイトの代わりを頼んだはずが、何故ここに、そしてなんで奥寺先輩?!と、ツカサを睨むタキ。
バイトの代わりはタカギに頼んだと言うツカサは、最近やけに危なっかしいから心配で来たんだと言う。
電話もメールもダメなら直接会いに行くと決めたタキと、そのタキを心配して来た友人と、面白そうとそれに着いてきた先輩の3人で岐阜県の飛騨へ。
そして何時間もかけて岐阜へ着いたはいいものの、詳しい場所も分からなければ、地名も覚えてない。
手がかりはタキが手書きで書いたスケッチの風景画のみ。
一緒に探してくれると言った奥寺先輩とツカサは観光気分の中、タキだけがあらゆる人に聞き込むが、全く情報が得られないまま、挫折。
そして高山まで来た3人はラーメン屋で高山ラーメンを注文。
このまま東京へ帰る話を始めるタキに、それでいいの?と問う奥寺先輩。
そして自分で描いた風景画を見つめるタキ。
「お兄ちゃん。それ糸守の画やろ?」
そのお店の奥さんがその画を見てそう言った。
そして店主も「ああ、糸守だな。懐かしい」と。
タキはその「糸守」にピンときたのか、思い出すように興奮し、「そう!糸守町!この近くですよね!?」と詰め寄るタキ。
そのタキの言葉を聞いた店主と奥さんが不思議そうに眉をひそめ「あんた…糸守町ってのは…」
その時ツカサと奥寺先輩も何かを思い出したかのように、「それってまさかあの彗星の?」と。
その中で一人だけ何がなんだか分からず唖然とするタキ。
糸守町出身だと言うそこの店主の車に乗せて貰い、そこから山道をひたすら走っていく。
そしてある場所に連れてこられた3人。
車を降りて、立ち入り禁止のバリケードから覗く風景を見て言葉を失う。
まさかここじゃないよね?何かの勘違いでしょ。と言う奥寺先輩とツカサ。
風景を見たタキは、それに反発するように、「間違いない、この校庭、周りの山、この高校だって!ハッキリ覚えてる!」と、今自分達が立っている高校のグラウンドで訴える。
校庭のグラウンドから先は地面がえぐられたようになにもなく、そこから先の町は瓦礫の山。
丸かった湖にはもう一つの丸が重なるように、さらに大きな湖が出来ていた。
糸守町は3年前に彗星が落ち、何百人も亡くなったという。
その事実を告げられ、何が何だか分からないタキ。
「ちゃんとあいつの残したメモも残ってる!」とスマホを取り出し、メモを見返すが、その瞬間データが壊れたかのように一つ一つメモが消えていき、ついには「データがありません」と、一瞬でメモは無くなってしまった。
それを見て愕然とするタキ。
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その後、町の図書館まで送って貰った3人は、その図書館で糸守町の事件を調べることに。
ティアマト彗星が地球に最接近したのは3年前の10月。
その核が砕け地球に飛来することは、誰も予測していなかった。
割れた彗星は隕石となって地球へ。
その日は丁度秋祭りの最中だったと言う。
落下地点は丁度祭りで人が集まっていた神社付近。
町の3分の1が壊滅し、500人以上が亡くなった。
今、糸守町には誰も住んでいない。
そして犠牲者名簿を一人ずつ確認するタキ。
そこでテッシーとサヤカの名前を見つけ、さらに伯母、ヨツハ、そしてミツハの名前も見つけ、言葉を失うタキ。
本当にこの人なの?この人は3年前に亡くなってるのよ?と言う奥寺先輩。
しかしついこの前、彗星が見えるねとメモをくれた!とそのことを思い出そうとするタキだが、何かが抜けたような感覚に襲われ、俺は何を?と自分に問いかける。
その後、旅館に泊まることになった3人。
娯楽室で一服する奥寺先輩の所にツカサが。
タキは部屋で図書館から借りてきた糸守町に関する新聞や雑誌をずっと見ているという。
そこでタキの言うことについてどう思うかとツカサが奥寺先輩に問うと、タキの事が好きだったと突然告白する奥寺先輩。
驚くツカサをよそ目に淡々と話していく。
「最近のタキ君は必死で可愛かった。タキ君の言ってることはおかしいけれど、きっとタキ君は誰かと出会って、その子がタキ君を変えた」と言う奥寺先輩。
部屋ではタキが、まさか全部自分の妄想だったのかと困惑する中、入れ替わっていた相手の名前も思い出せなくなっていた。
その後、奥寺先輩だけが部屋に戻り、タキの横に置かれた資料にあった「組紐」を見て、タキの手に巻かれた紐も組紐なのかと聞くと、これは昔に人から貰って、なんとなくお守り代わりにつけてるだけと言うタキ。
でも誰から貰ったんだ?と思ったとき、前に組紐を作る人からある話を聞いたことがある事を思い出し、奥寺先輩に話し始めるタキ。
「紐は捻れたり絡まったり、時間の流れもそうで、それが時間。」
と、その時にあのご神体を思い出し、あの場所なら!とさらに資料を探るタキ。
そして奥寺先輩とツカサは布団で、タキは疲れていたのか、調べ物をしたままテーブルに顔を乗せて眠ってしまっていた。
そんなタキの耳元に誰か自分を呼ぶ声が。
眠りながら聞くその声は次第に大きくなっていき、「タキ君。覚えてない?」とハッキリ聞こえたその言葉に眼を覚ますタキ。
早朝、部屋にはタキの姿は無く、置き手紙には二人だけ先に帰ってくれと書かれていた。
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そして前日のラーメン屋の店主に途中また車で送って貰い、ご神体の場所を目指すことに。
山道を歩くタキを寄せ付けないかのように突然降り始める豪雨と雷も鳴る。
岩の影で休憩しつつ、持ってきた地図とスマホのGPSを使い照らし合わせて、場所を目指す。
そしてどれだけ歩いたろうか、目の前にはあの時3人で奉納に来た時の見覚えのある光景が。
それを見た瞬間に、夢じゃ無かった!と、涙が雨に混じり頬を伝う。
そしてご神体を囲む川の元へ。
ここから先はあの世。
豪雨で水かさは増していたが、なんとかたどり着くことが出来た。
そして見覚えのある祠。
そして供えられた口噛み酒。
片方が妹ので、片方が自分。
口噛み酒が入れられた容器には藻がびっしり。
そこで改めて3年と言う時間のズレを実感するタキ。
「あいつの半分…」と容器のコルクを取り、「本当に時間が戻るならもう一度だけ」と酒を一口飲み込む。
そしてタキが立ち上がろうとしたとき、足を滑らせて倒れてしまう。
その瞬間、祠の天井に何か光りの千が描かれているように見え、タキはそのまま倒れて気を失ってしまう。
その瞬間、タキの中に色々な映像が舞い込んでくる。
それはミツハの家で起こったあらゆる事柄の事実。
どうやってミツハは生まれ、どのように育ったか。
ミツハの母親、そしてその母親を救えなかった父親の苦痛。
神社の存続を否定する父親に、婿養子の身分で!と対立する伯母。
俺が愛したのはフタバ。神社じゃ無い!と家を出て行く父親。
そして伯母、ミツハ、ヨツハの3人の生活が始まった。
と、そこで忘れかけていたミツハの記憶と共に、知らなかったミツハの気持ちと記憶。
そして「私、東京行ってくる!」と言うミツハの声。
その声にタキも「彗星が落ちる前に逃げろ!」と訴えるが、どこにも届かない。
と、何かが繋がる音と共に目覚める。
そこは見覚えのある部屋。
そして見覚えのある胸の膨らみ。
「ミツハだ。生きてる」と号泣しながらおっぱいを揉む中身がタキの男ミツハ。
そこに起こしにやってくるヨツハを見てさらに号泣。ヨツハに詰め寄る男ミツハ。
その恐怖に怯えるヨツハはそのまま姉を置いて登校。
そして居間のテレビでニュースを見ると「今夜彗星がやってくる」と、時間が戻っていることを確認した男ミツハ。
そこに居た祖母に男ミツハが駆け寄ると、祖母は「あんたミツハじゃないね」と。
男ミツハが「知ってたの?」と聞くと、そういえば昔、不思議な夢で誰かと入れ替わっていたことを思い出したと言う。しかし今は誰と入れ替わっていたのか記憶が消えてしまったという。夢は覚めると消えてしまう。
そして伯母はワシにも母ちゃんにもそんな時期があった。と言う。
それを聞いた男ミツハは、これまで代々受け継がれてきたその夢は今日のためにあったのかも知れない!と、今夜彗星が糸守町を襲うことを祖母に訴えるが、それは信じない祖母。
そのまま急いで登校し、教室でサヤカとテッシーに「このままだと皆死ぬ!」と二人を丸め込んで強引に作戦メンバーに引き入れる男ミツハ。
早速部室を使って作戦会議開始。
テッシーの案で、街中にある防災無線を乗っ取って使おうという。
そして爆弾を使って変電所を爆発、それを引き金に防災無線でみんなを避難させるという作戦。
爆弾はテッシーの親がやってる土木現場にダイナマイトみたいなものが有るという。
放送はサヤカが担当。テッシーが爆薬担当で、男ミツハは町長である父親に会いに行くという。
役場にも動いて貰わないと流石に全員は動かせない。
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早速役場にやってきた男ミツハだが、案の定聞く耳を持たない父親。
それどころか、頭がおかしくなったと病院に連れて行こうとする始末。
そんな父親にキレてかかる男ミツハ。
そんなミツハの怒号に「お前は誰だ?」と蒼白な顔面になる父親。
町長への直訴は失敗。
落ち込んで役場を後にする所で、祭りの約束を交わす子供達を見つけ、祭りなんか行ってないで逃げろ!と端から見たら脅迫まがいな行動に出てしまう男ミツハ。
そんな姉を見つけたヨツハが止めに入り、最近のお姉ちゃんはおかしい!昨日は急に東京に行くとか言い出すし。と。
「東京…」と言い固まる男ミツハ。
そこにテッシーとサヤカが。
放心状態になっていた男ミツハが突然何かを感じ取ったかのように山の方を見つめる。
そして作戦はそのまま続行と、テッシーが乗ってきた自転車を強引に借りて、ある場所を目指す男ミツハ。
一方、ご神体で気絶していたタキの体が目覚める。
見た目はタキで中身はミツハの女タキ。
訳も分からず祠を出て、町を見下ろすとそこは彗星が落ちた後の糸守町。
「町が無い…」と愕然とする女タキ。
そこであの秋祭りで彗星を見たことを思い出し、そこで自分が死んでしまったと悟る。
一方、ご神体のある山の頂上を目指す男ミツハはある出来事を思い出していた。
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その日はタキと奥寺先輩がデートをする日。
ミツハは居ても立っても居られず学校をサボって東京へ行くことを決める。
「迷惑かな。驚くかな。嫌がるかな。」と複雑な気持ちの中、電車に揺られて東京へ。
東京について電話を掛けるが、電波の届かないところに居るか~のガイダンスが。

もし会えたらという気持ちだけで、自分がタキの中に入っていた時に見た景色を追い求めてタキ自身を探す。
しかしどこにもタキは居ない。
やっぱり会えないか…と諦めそうになりながらも、私たちは会えば絶対に分かる。とその気持ちだけで東京中を探し回る。
そしてタキがいつも使う電車に目星を付けて駅のホームで張っていると、そこに電車がやってくる。
この電車だろうか?とほんの少しの期待を込めつつ、見逃さないように精一杯目の前を過ぎていく車両の窓を見つめるミツハの目が突然輝く。

その車両を追いかけるように、電車と併走して電車が駅に停車するよりも速くその車両の扉の前に立つミツハ。

そして満員電車の中に体をねじ込み、ある場所へ。
人混みをかき分けて着いた。
目の前にはタキの姿が。
初めて二人が出会った瞬間。
タキはまだこっちに気付かない様子。
でもミツハはタキをじっと見つめ、頬を赤くする。
「タキ君。タキ君」と小声で呼びかけるミツハ。
「え?」とやっと気付いたタキ。
「あの私…」と言うミツハに、なにもピンときていない様子のタキ。
「覚えてない?」と聞くミツハ。
そんな問いに「誰?お前?」と返すタキ。
想像もしてなかった答えに顔を真っ赤にさせて「すみません…」と聞こえるか聞こえないかの声で謝るミツハ。
(タキ君なのに…)
(変な女…)
二人の気持ちはすれ違ったまま、次の駅に着き、車両のドアが開き、次々と人が降りていく。
その人の流れに抵抗できず、ドアの外へ押し出されてしまうミツハ。
すると「あのさ!あんたの名前!」とタキがミツハを追うように聞くと、ミツハは髪を結んでいた組紐をほどき、タキに差し出すように、「ミツハ!名前はミツハ!」とその組紐を受け取るタキ。

3年前のあの日、ミツハはタキに会いに来ていた。
それを思い出したタキである男ミツハ。
そして山頂で「タキ君…」とつぶやく女タキ。
するとそこに「ミツハ!」と自分を呼ぶ自分の声が。
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ついに山頂にたどり着いた男ミツハは尚も呼び続けるが、そこにお互いの姿は無い。
呼び合いながら辺りを走り回り、触れることの出来ない二人はついに同じ場所で重なる。




そして、夕日が雲に隠れ辺りが薄暗くなったとき。
「ミツハ…」
「タキ君?タキ君?タキ君!」
いつの間にか体は元に戻り、やっときちんと会うことが出来た二人。
ミツハの目からは大粒の涙がこぼれ、タキは喜びをかみしめる。
どうやって?と聞くミツハに、ミツハの口噛み酒を飲んだと言うと、それまでの感動が吹っ飛ぶように「あれを飲んだ!?ばか!へんたい!」と急に怒り出すミツハ。
そのリアクションにオドオドするタキに、「それに私の胸触ったでしょ?」と、「い、一回だけだって!」としどろもどろになりつつ弁解するタキを見て、つい吹き出して笑ってしまうミツハ。
「あほ!」
「すまん!」
と、ふとミツハがタキの手首を見て「あ、これ」と組紐を見つめる。
「知り合う前に会いに来てもわかんねーよ。3年俺が持ってた。今度はミツハが持ってて」と組紐を返す。
しかしまだやらなければならないことがある。
二人はこの時間が終わる前に、お互いを忘れないように手に名前を書き合うことに。
タキはサインペンを取り出して、ミツハの手のひらに書き、次はミツハ。
そしてミツハがタキの手の平にペンを突き立てた瞬間。
タキの目の前からミツハは突然消え、タキの足下に落ちるサインペン。
「えっ」
少しの間何が起こったか分からず、ミツハに呼びかけるが返事が無い。
手の平にはサインペンが落ちる際に着いたインクが擦れた痕のみ。
「君の名前はミツハ」
大丈夫。覚えてる。
そう自分に言い聞かせながら何度も何度もミツハの名前を復唱する。
「君の名前は!…」
誰だ?
つい数秒前まで口に出していた名前が出てこない。
それどころかここに来た理由まで忘れそうになってしまうタキ。
「誰だ。どうして俺はここに来た。名前は。君の名前は!?」
一方、タキとの約束、まだ終わってないことをやり遂げるために山を下りて走るミツハ。
ミツハも何度も何度も
「タキ君!タキ君!覚えてる!タキ君!」
走りながら空を見ると、既に彗星の軌道が見えていた。
まだ諦めないと走り着いた先は変電所。
と、同じタイミングでテッシーが大きな荷物を持ってやってくる。
「あれ(彗星)が落ちるんか」と聞くテッシーに
「落ちる!この目で見たの!」と答えるミツハ。
その真っ直ぐな目にテッシーは疑いもせず、「これで二人仲良く犯罪者だ」と爆弾をセット。
変電所から離れる最中にサヤカに電話。
サヤカも「もう自棄だ!」と。
そして変電所で大きな爆発が起こり、街中は停電に。


そしてサイレンが鳴り響き、そのタイミングでサヤカが街中に避難を知らせる放送を。
「こちらは町役場です。変電所で爆発事故が起きました」と鳴き声をかみ殺しながら、平穏を装ったゆっくりとした声でアナウンスを続ける。
一方、役場では突然の爆発と、謎の放送に大混乱。
ミツハの父親も原因を探るのに必死だった。
そして祭り会場にやってきたミツハとテッシーはそこら中の町民達に避難を呼びかけるが、「何事だ?」と二人の危機迫る雰囲気にも、町民はただ傍観しているのみ。
これじゃあダメだと言うテッシーがミツハを見ると、突然「あの人の名前が思い出せん…」と困惑するミツハ。
そんなミツハに、これはお前が始めたことだろ。親父を説得しに行け!とミツハの背中を押す。
ミツハはその声を聞いて走り出す。
尚も町民は避難に積極的では無く、ノロノロと歩く人を避けながら役場を目指す。
そして役場では、防災無線の発信元が高校であるとバレ、ついに捕まってしまうサヤカ。
そして役場から新たに避難指示ではなくその場待機のアナウンスが放送される。
祭り会場では尚も避難を呼びかけるテッシーだが、そこに大勢の大人を引き連れたテッシーの父親が。
ここまでや…と空を見上げたテッシーの表情が変わり、彗星から赤い破片が。
そしてテレビではこの彗星の破裂を、奇跡だと。滅多に見ることの出来ないラッキーな現象だと放送。
そして東京でも大勢の人が足を止めて空を見上げ、マンションの屋上でも空を見上げるタキの姿が。
[mix1]
そして役場を目指し走るミツハ。
「ねえ、あなたはだれ?」と何度も心で問いかけるが、全く思い出せない。
と、走りながら頭上の彗星を見上げ、そこでミツハも彗星が割れていることに気付くが、その彗星に気を取られて転んでしまう。
坂道を転げ落ちるミツハ。
倒れ込み、しばらく動けなくなるミツハ。
そこでミツハはあの時、あの人が私の手に忘れないようにと何かを書いてくれたことを思い出す。
倒れたまま、手を開き見るとミツハの手の平には
「すきだ」
と書かれていた。
その文字を見て、力を振り絞って立ち上がるミツハはまた走り出す。
そして役場にたどり着いたミツハは、父親の元へ。
そこには既に駆けつけていた伯母とヨツハの姿も。
ミツハの姿を見ていつものように文句を言おうとした父親の口を塞ぐように迫真の顔で父親に向かい迫るミツハ。
そして彗星は糸守町に飛来。
町は一瞬にして崩壊した。
そして山頂では、「ここでなにしてたんだ?」とつぶやくタキ。
5年後。
電車に乗るタキはスーツ姿で就活中。
しかし、あの日からずっと何かを探している気持ちが取れないタキ。
就活もなかなか上手く行かず、内定を何社も貰っているツカサとタカギにも笑われるほどに。
と、その日は久しぶりに東京に帰ってきたという奥寺先輩と会うことに。
奥寺先輩の薬指には指輪が。
昔、糸守町に行ったときの話を懐かしみながら話す奥寺先輩。
あの時の事はタキ自身もハッキリ覚えておらず、何故奥寺先輩達と別れて帰ったのか、何故山に居たのか、ほとんど覚えていない。
ただ一つ、彗星の事故に関してはとても興味を持っていたことだけは今でも覚えている。
ティアマト彗星が地球に最接近したのは8年前の10月。
その核が砕け地球に飛来することは、誰も予測していなかった。
割れた彗星は隕石となって地球へ。
町の3分の1が壊滅したが、その日はたまたま避難訓練があり、ほとんどの町民は災害を受けなかった。
町長の強引な指示が奇跡を呼んだといくつもの新聞に取り上げられた。
多くの人々が助かったと言う奇跡に興味を持ったのかもしれないというほどに理由は分からない。
そうして奥寺先輩と別れ、一人夜のカフェへ。
そこで後ろに居るカップルの会話が妙に気になったタキ。
「テッシーさぁ」
その呼び名に振り向くが、二人はそのままテーブルを立って店を出て行ってしまう。
何故あの二人がそんなに気になったのかが自分でも分からないタキ。
[mix1]
翌日。
タキはいつも通りスーツを着て電車に乗っていた。
電車のドアの窓に寄りかかりながら何も変わらない風景をただボーッと見ていたタキ。
するとタキの乗っている電車の隣に併走する別の電車が。
と、向こう側の電車にも同じようにドアの窓に寄りかかる女性が。
ふとお互いに目を合わせると、ずっと探していた何かを見つけたように、二人の目は大きく開き、ドアを挟んだすぐそこに居る。
お互いにお互いが分かっているかのような表情を見せる二人。
しかしすぐに二つの電車の線路は別々の道を。
次の駅で降りた二人は全力で走って相手を探す。
そして坂道の階段の下と上で出会う二人。
荒い呼吸を整え、二人はゆっくりと階段を上り、階段を降りる。
そしてそのまま会話を交わさずにすれ違う二人。
と、絶えきれず階段を上った彼が振り返って呼びかける。
「俺君をどこかで!…」
その声にすぐに振り返った彼女が返す。
「私も…」
そして打ち合わせをしたかのように二人は同時に言う。
「君の名前は」
この作品を観るには
感想とか
画の美しさ
新海誠監督と言えばもはや語るまでもないとも言えますが、それぞれの短いカットや、ちょっとしたシーンのちょっとした背景に至るまで、本当に細かく描かれており、一つ一つのコマを静止してじっくり眺めたくなるような美しさは、本編の全てに行き届いていて、まず画だけで見る人を飽きさせません。



入れ替わるにチョイ足し
今作は良くある男女入れ替わりにプラスした要素が非常に大きく物語を動かしていきます。

その要素は上映直後から始まり、最後の最後まで良いスパイスとしてドキドキとさせてくれます。
特に最初の二人の距離の儚さには心が締め付けられました。


そしてその要素が次の展開を予想させず、最後の最後までどんな展開になるのか楽しみながら見ることができ、107分丸々飽きませんでした。
音楽が物語を加速させる
今作では主題歌、挿入歌共にRADWIMPSが4曲も楽曲を提供し、それぞれの音楽をそれぞれの場所でハッキリと演出に組み込まれて披露されていました。
特にオープニングを思わせるような「夢灯籠」で始まり、二人がお互いを認識する場面では「前前前世」など。
音楽に乗せて物語を巡るシーンはスピード感があり、飽きる暇も無く次から次へと情景が入ってくるので、私的には面白かったです。
ただ、少し音楽の主張が強すぎて、せっかくの物語がちゃちゃっと済まされてしまった様にも感じてしまいました。
スッキリ終わる
新海誠監督の作品は、最終的に「この後どうなったかはまた別の話」というパターンが多いイメージがありましたが、今作はきちんと締めくくられていてスッキリしました。
終盤の電車の窓越しはきっと見た人みんなの鳥肌が立ったと思います。
そんな「この後どうなったかはまた別の話」の別の話とまではいきませんが、こんな演出がありました。
雪ちゃん先生
2013年に公開された同じ新海誠監督の映画「言の葉の庭」に出てきたヒロイン「雪ちゃん先生」が本作にも出ています。
シーンは序盤で、三葉が初めてノートに瀧の落書きを見つけた所の授業中の先生です。
キャラクター名は「言の葉の庭」では”雪野百香里”で本作では”雪ちゃん先生”とされていました。
「言の葉の庭」の作中でも生徒達から”雪ちゃん先生”と呼ばれており、本作でも「言の葉の庭」と同じ古典の先生でした。
さらに演じている声優も同じ花澤香菜と言うことで、同一人物で確定です。
こういう分かる人には分かるという、ファンをニヤつかせる演出は気付いたときに妙な喜びがあって良いですね。


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