映画『アメリカン・スナイパー』感想(あらすじ&ネタバレあり)

アメリカン・スナイパー(原題:American Sniper)
日本公開日:2015年2月21日

アメリカン・スナイパー とは

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イラク戦争で多くの仲間を危機から救い、”レジェンド”と呼ばれたスナイパーが如何にして、そこまで上り詰めたのか、その影で起こっていた本人の苦悩や試練など、クリス・カイルの人生を132分にまとめた実話を元にした映画です。

オススメポイント
一人で見る:
友達と見る:
デートで見る:
家族と見る:
お子様と見る:
R15+指定。
ショッキングな映像や悲痛な内容。
見終わった後の余韻などは結構重いです。
その余韻に浸りたい方は一人で見ることをオススメします。

史上最強の称号を得た狙撃手 クリス・カイル の自伝を元にクリント・イーストウッドが映画化。

アカデミー賞6部門にノミネート。
その中で音響編集賞のみの受賞となりましたが、いわゆる戦争映画としてはアメリカの映画史上最高の売り上げを記録しています。
と同時にクリント・イーストウッドの作品としても史上最大のヒット作となっています。


予告編

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これより下にはネタバレが含まれます

※これ以降は筆者の感想と共に作品の内容に深く関係する記述が多く含まれています。最低限の配慮はしていますが、今後作品をご覧になる際、先入観により純粋に作品を楽しめなくなる可能性があります。またこの感想は筆者の私見であり、矛盾点や間違いがある場合があります。それら全て含め、ご了承頂いた上でご覧下さい。


あらすじ(ネタバレ)

冒頭からイラク戦争のシーン。

ある町に派遣された米軍部隊。
いつ敵や組織に襲撃されるかも分からない中、作戦の為、一つ一つ建物の中を調べていく隊員。
それを近くのビルの屋上からサポートする狙撃手のクリス・カイル。
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と、狙撃銃の照準器からあるビルの出入り口から女と子供が出てくるのを発見。
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女が子供に手榴弾のようなものを渡した所を確認。
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無線でそのことを伝えると、危険ならばクリスの判断で狙撃をしろとの命令が。

手榴弾を持った子供。
ただしそれが間違いであればただ事では済まない緊張感の中。


–ここで過去へフラッシュバック。


クリスがまだ子供の頃へ。

父親に連れられ、森林奥で狩りをしている場面。
クリスが初めて狙撃で鹿を仕留め、父親から良い腕だと褒められたクリス。

そしてクリスは成長し、テキサス州でカウボーイとしての人生を歩むことに。
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がしかしそれもあまり上手くは行かず、恋人には時代遅れと言われ、色々あって破局。
そして友人とテレビを見ていると大使館を標的とした爆弾テロのニュースを目撃。

それを見たクリスは何かに心を動かされ、アメリカ陸軍 Special Forces への入隊を望んだが、ある階級を踏まないと入隊することができない一方で、試験さえパスすれば入隊できる海軍 SEALs への入隊を志願。

脱落者も出る中、長く厳しい訓練過程を経て約3年を費やし、狙撃手としてやっと入隊。
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その中で偶然であった タヤ という女性と すぐに意気投合
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長い交際を経て結婚。
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軍に身を置き、身の危険と隣り合わせな夫のクリスとの未来を心配しながらも。
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そして一回目の派遣。


場所はイラクの中心都市ファルージャ。
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クリスの担当は道路を行く部隊を狙撃で支援保護。

敵にもムスタファと呼ばれるオリンピック選手の狙撃手が居るとの情報も。


–そして映画冒頭の物語に繋がる。


部隊を見つめる女が子供に手榴弾のようなモノを手渡す所を発見したクリス。

そして子供が部隊へと走って行く。
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狙撃の判断はクリスに任せられる中、クリスは子供を狙撃。
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すぐ後ろに居た手榴弾を渡した女が駆け寄り、子供が落とした手榴弾を手に取る。
そしてそれを持ち上げ、部隊へ走って行き投げようとする。
が、すぐにクリスが狙撃。

瀬戸際で部隊を救ったクリスに歓喜する仲間だが、クリスは子供を狙撃したことに心を痛める。

自分が想っていた仕事とは違ったことに落胆するクリスに仲間が、その子を狙撃しなければ10人の隊員がやられていたと助言。

そして幾度の作戦の中、次々と部隊の危機を狙撃で救っていくクリス。

時には自動車に乗って部隊へ自ら追突し自爆しようとする運転手を狙撃し、未然に防いだり、
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地雷を設置しようとする男を狙撃したり、
次々と狙撃していっては、そのたびに消沈していくクリス。

しかしその狙撃の功績に、隊員の中で レジェンド と呼ばれるまでに。


そんな中、クリスとの子供を身ごもっていた妻のタヤとの電話。
人を殺しているのか心配するタヤにクリスは自分のやっていることを明かそうとせず、会話をはぐらかす。
しかしそんな戦場で妻との会話を楽しみ、お互いに寂しさを募らせる。
タヤの見るテレビには米兵の死者の情報が。
タヤの心配も募る一方。


そして部隊ではビンラディンを支援する過激派のザルカウィを捕らえる作戦が決行。

作戦の最中、いつものように高台から照準器で部隊をサポートするクリス。
そんな中、動きの鈍い部隊を発見。
それは急に配備され、まともに訓練も受けていない部隊で、その動きに不安を覚えるクリス。

クリスは「訓練してやる」と自らその部隊に合流。
敵の狙撃手であるムスタファの存在も危惧されるが、イラクに派遣されて今だムスタファと相見えなかったことから、ムスタファはイラク人では無くシリア人であると、今回も姿を現さないだろうと予想。

そしてクリスは地上部隊と建物を一軒一軒突撃。
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するとある建物で男とその家族を発見。
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戦闘の中心部であるこの地区に今だ一般人が居る事に驚きながらも、通訳を介して家主の素性を洗うと。

すると家主の口から「話せば奴が来る」と。
そこを追及すると、話すとブッチャーという殺し屋が私たちを殺しに来ると。
そのブッチャーはザルカウィの右腕だと。

家主は情報を金で売ると言うが、クリスはそれが確かな証拠がないと取引を躊躇。

すると家主が妻を呼び、ブッチャーに切り落とされて失った妻の腕を見せる。

それを見たクリスは安全を約束するから協力してくれと。

一度本部へ戻り、このことを通告。
そして部隊を挙げて再び家主に会いに行くことに。

が、しかし一足遅く、そこにはブッチャーとみられる男が家主の子供を連れ去るところだった。

さらにムスタファの姿も。
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次々と狙撃され倒れていく仲間、辛うじて物陰に隠れたクリスだが、ムスタファの狙撃があり動けない。
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そしてブッチャーが家主とその子供を悼みつけ殺害。
「密告すればこうなる」と言葉を残し去っていく。


作戦は失敗し、一時帰国。

空港でタヤと久々の再会に喜び合う二人。
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そしてタヤの妊娠定期検診で二人は病院へ。

そこで医者がクリスの微妙な異変を察し、クリスの血圧を計ることに。
すると170-110という異常な数値が。
その結果にクリスは当然のように振る舞い、すぐに帰ろうとする。

だが、タヤの心配は募るばかり。
帰りの車の中でそのことで口論に。

その時、タヤに陣痛が。
すぐに病院へ引き返し、無事男の子を出産。
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その後、自宅で戦場のビデオを見ているところにタヤが。
すぐにビデオを消すクリスに、さらに不安が増すタヤの「必ず私たちの所に戻ってきて」と言う言葉に言葉を無くすクリス。


そして第二回の派遣。


今回の作戦はブッチャーを狩ること。
それ用のチームも編成され、仲間も伝説の男と仕事ができることを楽しんでいる様子。
不安を覚える仲間にもクリスが話しかけ、心を一つに。

そして作戦の決行。
日の沈んだ夜。
ある建物に入り、部屋に突撃。
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そこで家主、妻、息子を拘束。

ここが作戦の拠点となる。
すぐに家主にブッチャーの写真を見せるが、その顔に覚えは無いと。
事情を説明し、部隊が去ったら逃げて良いぞと拘束を解く。

窓からブッチャーが潜むとされるアジトを監視。

長時間の監視も大きな動きも無く。

すると家主がチームにご馳走を振る舞ってくれると。

厚意に甘えて和気藹々と食事する中、クリスがふと家主のヒジに目をやると、なにやら痣のような痕が。

トイレに行くと言い席を立ったクリスは、家主にバレないように家の中を物色。
するとベッドのしたから大量の銃器を発見。
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すぐに家主を引っ張り、ブッチャーの所へ取り次げ と半ば強制。

そしてアジトの周りを囲み、家主がアジト内部へ入った瞬間から銃撃戦。
チームによりすぐに撃ち殺される家主。

アジトの中は人の死体だらけという悲惨な空間だった。
アジトの中を制圧していくが、トンネルを発見。
そこから各方面へ敵が分散。
チームを撹乱させるが、クリスの狙撃の援護もあり、五分五分の戦い。
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そんな中、ブッチャーが車で逃走。

作戦が失敗したチームは、その街の住人等に罵声を浴びながらも、その場を離れることに。


そして帰国。

二人目の子供が出来たクリスは大きくなった息子と出かけた際、戦場でクリスに助けられたという男と出会う。
沢山の感謝の言葉を伝える男にタジタジとするクリス。
その男は息子に「パパはね。英雄なんだよ」とまで。
さらにお礼の言葉を伝える男に戸惑うと同時に、街から聞こえる重機の音にいちいちビクビクするクリス。


そして三回目の派遣。


クリスが相棒と呼ぶほどの仲のビグルスが恋人と結婚するために指輪を買ったと言うフラグ。

そんなチームの車を目撃した男がある場所に電話。
その電話を受けたのはムスタファ。

一方で目的地まで車で向かっていたチーム。
そこに銃弾が被弾。幸い誰にも当たらなかったが、戦いの中である建物の屋上へ。

安全を確認し、安心したその時、ビグルスの顔面をライフルの銃弾が貫く。
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すぐに応援と衛生兵を呼び、クリスが応戦するが、まともに敵の姿を捕らえられない。

意識が朦朧とするビグルスを抱えて道路へ。
そこに来た仲間の車に乗せて撤退。

車の中でビグルスがクリスに買った指輪を渡してくれと頼み、わかったと返事をするクリス。

基地に戻り、応急処置をするが、あまり良くない状況。


そしてクリス達はあの距離で狙撃できるのはムスタファしか居ないと、ビグルスの仇を討つことに。
そのチームの隊長にはクリスが。

すぐさま戦場に戻り、片っ端から敵を排除していく。

そしてある地区に到着。
その建物の中を探索。

その廊下を歩いていると、窓から狙撃。仲間が殺されてしまう。

チームはやむなく撤退。
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帰国し、仲間の葬式を行った。
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その帰り、車を運転している際にも後ろを走る車や、追い越してくる車に気が立って仕方無いクリス。

そしてクリスは入院しているビグルスの元へ。
元気そうに会話するビグルスに冗談を交えてたわいもない会話をするが、目が見えていない様子。
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クリスはビグルスに必ず仇を取ってやると約束。

自宅に帰ったクリスは妻のタヤに、自分が生きて帰って来られない場合の話をする。
そんなことはとても聞いていられない様子のタヤは、ここに残って家族を守ってと訴える。
が、クリスはこれが君のため、君を守る為だと。
私たちはここに居ると言うタヤに、国の為なんだと。
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それでも今が引き時、他の人にバトンタッチしてと頼むタヤに、
それでは自分が自分でなくなると言うクリス。
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4回目の派遣。


仲間達と会話をしている中で、ついこの間 冗談で笑い合っていたビグルスが手術中に死んだことを知る。
ショックを隠しきれないクリスだが、それでも作戦の時間はやってくる。


いつもの用に屋上を陣取ると、クリスとは少し離れた場所で仲間が狙撃に合う。
ムスタファの登場。
すぐに体勢を整えたクリスは目視でも確認出来るか出来ないかの距離にスナイパーとしての目で怪しい人影を見つけるクリス。
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しかしこの状態で撃てば敵に見つかってしまう。
しかもそれは通常では狙撃が不可能とされる距離。
それでも照準を合わせ、いつでも狙撃できるというクリス。
さらにクリスはその人影をムスタファだと断定する。

本部は依然、救急部隊の到着を待てとの指令。

クリスはムスタファが別の仲間を狙ってることを感づく。
仲間は半信半疑で、本部の命令に従えと言うが、「ビグルスの仇」と言い発砲。

その弾ははるか遠くに居たムスタファを貫く。

これで任務完了だが、その銃声で敵にクリス達の居場所がバレてしまう。

瞬く間にクリス達が居る建物が敵に囲まれてしまう。
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陣形を整え、わらわらと建物の中に入ってくる敵に応戦するが、残った弾薬もあとわずか。

仲間の犠牲もあった中で、ついに追い詰められた状況。
すると仲間が無線で航空支援を要請。

その中でクリスは衛星電話でタヤに電話。

タヤはすぐにその電話がクリスからだと気付くが、クリスの声が全く届かない。
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それでもクリスはタヤに向けて「家に帰るよ」と。

そして仲間が航空機に乗るパイロットへ座標を送るが、そこはクリス達の居る場所。
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それに戸惑うパイロットだが、撃てという現場の仲間の指示に従い、ミサイルを発射。

そして発射されたミサイルは乱気流と砂嵐の影響で外れてしまう。
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そして戦場は砂嵐の中、視界も数メートル先が見えないまでに。
チームはこのタイミングで建物横に立っていた電柱をつたって一気に地上へ。

そこにやってきた救急部隊と合流。
するが、途中でクリスが撃たれてしまう。

車に乗り込んだ仲間がクリスが居ないことに気付き、なんとかクリスを見つけ、引き上げ撤退。


場面は変わり、部隊を除隊したクリスはあるバーで一人酒を飲む。
そこにタヤからの電話が。
早く帰ってきてと言うタヤの言葉に「心の整理が要る」と涙するクリス。
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このとき、クリスは自分の身に起こっている何かに気付き始めていた。

家に帰ってきたクリスは銃撃戦の幻聴が聞こえるなど、明らかにおかしい状態だった。
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その後、家族ぐるみのパーティーに誘われたクリス一家。
楽しく過ごしていると、クリスの息子にその家の犬がじゃれてきて、押し倒されてしまう。
その場面を見たクリスは犬を押さえつけ、犬を叩きのめそうとする。
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咄嗟のタヤの呼ぶ声に我に返ったクリス。

そのまま病院へ。


カウンセリングを受けるクリス。
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その中で色々な人達と出会い、次第にクリスに現れていた異常な症状も克服していく。

そしてクリスの前に現れたある一人の男が。

真に伝わる戦場の悲惨さ

他の戦争映画であまり見ない、子供を殺すシーンが描かれており、その子供も戦争のために使われているなどと、これが戦争なのかと、争いとは無縁の環境で育った私にはとても印象深く心に残りました。
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また殺された側や殺した側の心情なども濃く描かれており、その辛さが伝わってきてなんとも言えない気持ちになります。
これが実話を元にした作品だと思うとさらに。

伝説のスナイパーが助けると誓った相手ですら、実際の戦場では100%はないという残酷さ。

スナイパーというカッコいい響きを無駄に美化せず、人を殺めるという行為に対する悲惨さと、その結果をより深く描いた、本当に心を打つ内容でした。
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実話を超えた演出

これはある一人の兵士が経験した一つの物語。
しかし、その物語をここまでドラマチックに、その物語も非常にわかりやすく、見る者を飽きさせない内容にまとめたのは流石の成す技だと思いました。

とても難しい内容ではない分、多くの人の心にストレートに響いた結果がこの作品の人気に繋がったのだと思います。

「伝説のヒーロー」と謳われている中でも、そのヒーローの苦悩や格闘、心情まで。
それら全ての表現が、言葉や表情、そして情景に映し出されていました。
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特に銃撃戦の場面では、臨場感のある映像に緊迫感と、手に汗握るとはまさにこの事かと思うぐらいに、見ていて力が入ってしまいました。
その分、この作品を見た多くの人は見た後に良い意味で「疲れた」と思うでしょう。

臨場感については、見て頂ければ分かると思いますが、銃を構える兵士から、大きな戦車などの一つ一つを撮るカメラのアングルなど、計算し尽くされたかのように綺麗に撮られていて、このカットの撮り方はこうだよと基本定義になっても良いと思うほど一つ一つのカットに見応えがありました。

ただ唯一残念だったのが、一部赤ん坊を抱いて夫婦で話し合うシーンで、明らかにどう見ても赤ん坊が人形だったのは、それまでリアリティな演出が続いていた分、いきなりの人形で だいぶチープに見えてしまいました。
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細かな演技

この映画のリアティーさを上げてる大きな原因が、素晴らしい役者の方々の演技。

特に被弾した後の目の動きや身体の硬直の仕方など、本当に細かく演技されていて、それが演技なのに痛々しく、ゾッとするほど。
画面の端っこの小さく映る役者一人一人にも、「そんな演技誰も注目してないって!」と思うぐらいまで細かな動きが指導されていて、感心しました。

エンディングに込められたもの

最近ニュースにもなっているので知ってる方も多いかと思いますが、この作品の主人公であるクリス・カイルはその後、自らが進んだ新たな道で 残忍な事件によって命を落としました。
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突然のクリスの死で、一時この作品の製作が中断した後に、クリスの妻であるタヤが子供達に父親の記憶を残したいと、制作を続けてくれと。

本編が終わると同時に、クリス・カイルが死去した当時のアメリカの実際の映像が無音の中淡々と流れます。

これはクリント・イーストウッド監督が、クリス・カイル本人に向けた黙祷であり、この作品への感謝の意味も込められているのだとか。

このエンディングに黙祷の意味が込められているのだと知ったときに、この作品が作られた意味が少し分かったような気がしました。

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